日刊ニュース

2012.11.12 のニュース

石油が消え顕在化する反作用

その展望台は国道37号線沿いにある。駐車場からの長い階段を登って行くと、雨天でも屋根があって安心な展望施設に到着。そこからは、夕暮れ時には赤く染まる白鳥大橋を横から眺め、その手前にあるJX日鉱日石エネルギー室蘭製油所の一部を見ることができる。工場群の保安灯や発電設備から出る水蒸気の煙が、よいアクセントとなっている。
 船川、秋田、新潟、富山、川崎、横浜、知多、海南、下松、中城。日石、三石、日鉱、共石、九石の集積である日鉱日石エネルギーの製油所が所在していた地域の名称だ。この地名(当時)に、14年4月から室蘭が加わる。かつては20万人に迫る人口を誇った鉄の町。10万人を割り込んだこの室蘭の地から、市民の誇る景観を構成していた1956年操業開始の製油所のトッパーの火が消える。石油化学が増強され出荷機能が残るが、製油所としての存続を求める地域経済・社会・行政の動きが沸き起こっていることを見ても、この室蘭製油所が愛されていた証が見える。
 国内でこれまでに原油処理停止が実行・発表された製油所の中でも、室蘭の日量18万という規模は過去最大となる。この製油所がフル稼働すると、年間約1000万㌔㍑の原油処理・石油製品になり、約1300万㌔㍑前後の道内の全石油需要の実に8割を支え得る。道内唯一の製油所となる出光・北海道製油所(苫小牧市)は14万(約800万㌔㍑)だから、道内需要の4割が他地域からの転送品となる計算だ。
 なによりこのニュースを寂しく捉えたのは、道内の2千のSS・経営者であり、市内に27ヵ所を数えるSS、うち15ヵ所を占めるJX系列SSであろう。
 尾鷲、姫路、与那城。ここに徳山が14年3月から加わる出光。
 函館、横浜、下津、松山。ここに来年7月から坂出が加わるコスモ。
 これで、東燃ゼネを除く全元売が法対応が整うという。多くの元売が9割以上、フル稼働に近い体制となるもので、ほとんど精製余力を有しない姿となる。
 6万ヵ所から3万6千ヵ所へと4割減となった。SSが機能を停止することで不安を覚える生活者が全国津々浦々に顕在化している。競争原理を強いるばかりでは、生活者の安全が脅かされ、広い地域でのリスクが高まる。その方向が間違いなく透けて見えてきている。

提供元:全国石油商業組合連合会
〒100-0014 東京都千代田区永田町2-17-14石油会館
TEL:03-3593-5751
FAX:03-5511-8870
ユーザーID:
パスワード:
ログインする
e-BISTRADE