2012.11.14 のニュース
元売の上期決算は大幅減益 ―マージン減と在庫評価損が影響―
元売の上期決算が発表されたが、前年に比べると減益となっている。その要因は、原油価格の下落に伴う在庫評価損の発生と製品マージンの減少があげられている。
原油価格(ドバイ)の動向をみると、4月の初めが120ドル/バーレルであったものが6月には90ドル台に急落、その後は値上がりに転じて9月には110ドル台に戻した。しかし、4月~6月の急落で多額の在庫評価損が発生、7月~9月で値上がりしたが、在庫評価損を挽回できず、上期では在庫評価損が残ることになった。
JX日鉱日石エネルギーの石油事業をみると、経常損失96億円、前年比で1521億円の大幅減益となった。在庫評価損432億円を差し引くと337億円の経常利益となり、前年が693億円の利益であるため前年比では358億円の減益となる。出光興産の石油事業は営業利益が51億円で、前年比440億円の減益となる。在庫影響を除くと156億円の利益となるが、前年比では101億円の減益となる。この在庫評価損の影響には対処する術がなく、原油価格の値上がりによる在庫評価益の発生で相殺するしか方策はない。各社は下期の原油価格を110ドルと見込んでおり、これ以上の価格で推移すれば上期の在庫評価損が消えることになる。
また、110ドル台の高値で推移すれば、各社の石油開発事業が増益となるため、仮に石油事業が赤字となってもカバーできることになる。石油事業では、原油価格が値上がりすれば在庫評価益が発生するが、コスト増となる。しかし、コスト増の転嫁(仕切価格の値上げ)が難しく、在庫影響を除く数字では赤字となる。この石油事業の赤字を石油開発事業の黒字でカバーしている現状である。元売は、原油価格が上昇する局面では石油開発事業で利益が計上できるため、石油開発事業を持つJXエネルギー、出光、コスモ石油の決算では、増益で寄与している。ただ、石油開発は巨額の投資が必要となる上、リスクが高い事業であり、失敗した場合、巨額な損失を被ることになるため、本業の石油事業で安定した利益を確保することが重要となる。
元売の上期決算では製品マージンが減少となっている。‘製品マージンは原油価格CIFと販売価格(仕切価格)との差であり、精製費、一般管理費、利益を加算したコストで販売価格が形成され、回収される必要がある。しかし、価格競争が激しく、安定したマージン確保は難しい。原油価格が値下がり局面となると、市況が先取りして値下がりするため、マージンが減少し、値上がり局面では、コスト増の転嫁が遅れるケースが多い。どちらの局面でも適正マージンの確保が困難な状況となっている。
元売の上期の白油のマージンは平均で8円/L程度とみられ、最低でも10円以上が必要とされているが、これを下回っている。マージン増を図り、元売は仕切価格にブランド料として5円程度を加算しているが、販売業者からは、業転市況に比べて5円高となっているため適正マージンを加算できないと反発がでている。適正マージンとして、ガソリンでは10円~15円が必要とされているが実勢は8円~10円程度であり、安値は5円~6円となっている。このように元売、販売業者とも低マージンが続いている。