2013.01.15 のニュース
足元のエネ政策に目を
老朽化した地下タンクの補強を義務付ける改正消防法の猶予期限が今月末に迫っている。消防法改正が決まって以降、規制対象となる地下タンクを所有するSS事業者の多くが、猶予期限の今月末を目標に、国の補助制度などを活用しながらFRPライニング工事や電気防食の設置、さらには精密油面計の設置などの工事を急ピッチで進めてきた。
しかし補助制度を活用しても、自己負担分が調達できない事業者や、減少する販売量や縮小し続けるマージンの傾向から、投資コストを回収する目途が立たないとして、経営の維持・継続を断念する事業者も増えている。最近、マスコミが、こうした事情で廃業するSSが急増している実態を報道、地域でのガソリンや灯油の調達に支障が出ているという具体的な事例を、SS経営者や消費者の声を交えて紹介している。確かに、SS事業者にとって国の補助金はありがたい存在だが、そうした支援があっても、老朽地下タンクを持つ地方の小規模事業者にとっては負担が大きく、廃業を決断せざる得ないという現実が目の前にある。
全石連や全国の石油組合はここ数年、SS過疎化の加速に警鐘を鳴らし、国の政策において石油の基幹エネルギーとしての位置付けの明確化や、全国に張り巡らされたSSネットワークの維持に向けた抜本的な政策の実施を訴えてきた。東日本大震災では、電気、ガスなどのライフラインが寸断された時に、被災地の人たちが最も必要とし頼ったのはガソリンであり灯油だった。被災地だけでなく関東周辺でもSSに長蛇の列ができ、災害時緊急物資としての石油の重要さが再認識された。
しかし、それもつかの間、いまの国の政策は、原発問題やそれをカバーするための電源対策、さらには天然ガスシフトや再生可能エネルギーの普及促進という将来のエネルギー政策に重点が置かれている。足元で現実に起きている地方でのガソリン難民問題や灯油の調達困難化などについては、抜本的対策が講じられていないというのが現実だ。
月末に向けてSS閉鎖やそれを伝える報道がさらに増えるだろう。行政・政治は将来のエネルギー政策も大事だが、この現実を踏まえ、車がなければ生活できない地域、灯油を買いたくても買えない人たちに視点を置いた「足元のエネルギー政策」にもっと目を向けてもらいたい。