日刊ニュース

2013.04.30 のニュース

LNG調達価格の削減が課題-シェールガス革命で流れが変わる-

 当面のエネルギー政策の課題は、電力向けの化石燃料調達費の増大を削減することである。これは23日に開かれた総合資源エネルギー調査会総合部会で、課題として取り上げられ審議された。民主党政権時代にも、この問題が提起され、審議が行なわれたが、原発問題が優先となり先送りとなっていた。
 東日本大震災以降、原発の稼働停止により、LNG、石炭、石油火力に電力シフトしており、これら化石燃料の輸入数量が増大したことに加え、資源の値上がりにより調達費が増額となり、2011年の貿易収支は31年ぶりに赤字となった。2012年(1月~12月)は貿易収支が7兆円の赤字、年度では8.2兆円の赤字となった。かつては日本の貿易黒字が国際的な問題となっていたが、大きく様相が変化している。
 とくにLNGは輸入数量の増大と、輸入価格については約5割も上昇していることが問題となっている。LNGの値決めは原油価格に連動した方式となっており、北米の価格に比べ日本の輸入価格は割高となっているため、価格引き下げが喫緊の課題と指摘されている。
 アメリカのLNG価格(ヘンリーハブ)約4㌦(100万英国熱量単位)に対して、日本のLNG輸入価格は18㌦となっている。アメリカからの輸入コスト(液化、輸送費など)を加算しても5㌦~6㌦は割高となる。また、LNGの輸入額は2010年の3.5兆円から2012年は6兆円となり2.5兆円の増加となっている。
 LNG価格については、東日本大震災以前はカタールでの増産などから下落するとの見方もあったが、福島原発の事故以降の原発稼働停止により、LNG火力へのシフトが加速したため一気に値上がりした。LNGの供給確保については、日本企業の努力と、アメリカでのシェールガス革命による生産増もあり、供給量は確保されている。資金力と積極的な確保策が功を奏したことになるが、輸入価格の上昇によりコスト高となり、電力料金の値上げをユーザーが負担する結果となっている。
 そのため、日本政府はアメリカにLNGの輸入を要請するなどの働きかけを行なっている。アメリカはLNGの輸出を原則として禁止しているが、外交努力により可能性がみえてきた。だが、輸出が開始される場合でも2017年以降となるため、直ちにLNG価格問題解決に寄与するのではなく、まだ先の話となる。
 LNGの輸入数量は確保できているが、調達価格の高騰でコスト増となり、電力各社は軒並み赤字となっため、電力料金を値上げした。さらに今秋からの料金の値上げを経済産業省に申請している。電力料金の値上がり、供給不安が生じた場合、企業は生産拠点を海外に移すことが考えられ、産業の空洞化、雇用の喪失という経済問題に発展する。
 一方、世界のガス供給については、シェールガス革命による増産によって、アメリカはガス輸出国に転換するなど情勢が大きく変わってきた。欧州ではLNGは供給増となり価格は低下。ロシアは欧州向け輸出が減少したことで、日本への輸出に関心を高めている。また、ガスの増産による効果として、エチレンなど石化品、石炭価格の値下がりへの波及が期待されている。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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