日刊ニュース

2013.06.05 のニュース

不当廉売 石油の注意は426件と多発-迅速処理も市況健全化には効果薄-

 公正取引委員会は、平成24年度の独占禁止法違反事例の処理報告を発表した。それによると、不当廉売事案での「石油製品」の「注意」が426件となっている。前年に比べると18件の減少となったが、不当廉売に該当する事案が依然として多いことが実証されている。石油販売界において価格競争が多発しており、改善されていないことが明らかになった。
 「注意」件数をみると「酒類」が1123件で圧倒的に多く、ついで「石油製品」が426件、「家電」が121件、「その他」が66件で、合計1736件と非常に多くなっているが、その前提となる申告数は約5倍の8173件という膨大な数字となっている。
 この不当廉売での「注意」については罰則規定がなく、公取委が該当する業者に口頭、文書で伝える程度であり、販売業者からは「何回、注意を受けても反省することはなく、改善策がみられない。注意を重ねた場合には、厳しく処分すべきである」との意見が出ている。だが、「注意」は何回受けても「注意」であり、現状では、法改正して処分を強化しないことには改善は難しい。
 運用面では周辺の販売業者から不当廉売で申告を受けた場合には「2か月以内に処理する」との方針に改善されて、迅速な処理を行なうことになった。以前は、申告してから調査までに時間がかかり、結論がでた頃にはすでに周辺の市況が急落しており、「注意」処分決定の効果はなくなっている。そのため市況実態との間にズレがあるとの批判が出ていた。この点が改善されたことは評価されるが、独禁法上の解釈では「注意」はクロでなく灰色との判定であるため、処理が行なわれても、「注意」の連発では市況の健全化に結びつかないとの反発が出ている。
 石油販売業界では、1年間で「注意」が426件と多発している実態をみても、公取委の「注意」判定に効果がないことが実証されている。これでは申告をしても意味がなく、不当廉売(安値販売)の解釈が、現実と乖離していることになる。
 「注意」より厳しい「警告・公表」が1件、福井県で13SSを所有するミタニの事例が提示されているが、これは「自社、子会社を通じて、ガソリンの供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し、周辺業者の事業活動を困難にさせた」として、クロの判定が出され公表されている。「勧告」によって改善が要求され、「公表」によって社会制裁を受けることで不当廉売を廃絶する効果が期待されている。
 だが、この勧告も同業の石油販売業者からみれば、法律違反となるが、反面、消費者からは不当廉売は安売りであり、むしろ歓迎される面もある。そのため制裁措置の効果がないという難しい面もある。仕切価格をも下回る価格で販売することはダンピング(不当廉売)となるが、安値で販売してでもシェアを確保しようとする業者が後を絶たない現状であり、市況の健全化は遅々として進まないこととなる。今後もノンブランド、HCなど、異業種によるガソリン販売への進出が多くなるため、現在のように、申告しても「注意」止まりが多く、安値販売が改善されない状況が続くならば、SSの減少に拍車がかかり過疎化は加速する。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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