2013.07.04 のニュース
新「指定地区」制度の考察
ガソリン内需の減少、過当競争によるSS収益悪化、安値を武器とする無印SSの拡大…。
今日の国内ガソリン流通市場の概況だが、これと全く重なる事象が、実は40年前にもこの国にはあった。時は1973年末から始まる第1次石油危機の直後に遡る。
石油危機以降、原油高騰によるガソリン価格の上昇と省エネルギー意識の浸透などによって、国内ガソリン需要の伸びは急ブレーキがかかった。それまでは年率10%を超えていた前年比増加率が、74年にはいきなり0・4%減とマイナスに転じた。当時の概況は、SS業界は販売数量減少を巻き返すべく、低価格競争を繰り広げ、収益も減少するという悪循環に見舞われた。
また、この時期、13社を数えた元売の系列に属さない無印SSが出現し、安値をセールスポイントとして顧客獲得をする場合が多く見られた。
この時期の混乱、過度の石油・中東依存によるエネルギー安全保障の脆弱性を鑑みて、石油販売業界に向けては、77年に揮発油販売業法が制定された。その際に、「SSの健全な発達によるガソリンの安定的な供給と消費者利益の保護のために、SSの登録制度と品質管理とともに導入されたのが、SS新設にかかる「指定地区」がある。
市区町村別に公布され、新設によるSS純増を許さないもので、SS建設は国家的政策から、凍結ないし全面自粛の行政指導が強力に行われた。石油協会が実施する経営実態報告によるSS損益、SS密度などをベースに指定され、新たに敷設された高速道路内などを除いては、SS新設が抑制された。既存SSを廃止して新しくSSを建設する「スクラップ・アンド・ビルド」によって、域内の配置替えは行われたが、その後の内需回復基調を背景に、シェアアップを目指す元売間の競争が激化、元売間でSSのマーク替え(転籍)が激しく展開された。
内需減、SS疲弊、PB増勢という同じキーワードに、今日では、SS過疎地問題が加わっている。過疎地SSの最大の問題は、地下タンクの経年劣化対策もある。後継者問題もある。最も厄介なのが、経営努力を重ねて、辛うじて過疎地で残存者となったSSが、廃業したSSが残した域内需要という残者利益を根こそぎかっさらっていく商法だろう。新たな指定地区制度で、地域社会に対して無責任な新参SSの跳梁を制限できないだろうか。