2013.07.17 のニュース
原油価格は値上がり続くが-需給面から値下がり要因も-
エジプトの政情不安から原油価格が値上がりしている。足元の相場はブレントが107ドル~108ドル/バーレル、WTIが106ドルへと急騰しており、価格差が縮小されている。ドバイは103ドル~104ドルと3ドル~4ドルの値上がりで推移している。とくにWTIが値上がりをみせており、2月~3月ではブレントとの価格差が15トドル程度あったものが接近してきた。ちなみに2月平均ではブレントが116ドルであったがWTIは95ドルで、その価格差は21ドルと拡大していた。WTIはアメリカ国内の原油市況であり、ブレントと大幅に乖離したため、世界の指標としては活用できないとの見方となっていた。まずブレントが値上がり、これにドバイ、WTIが追随した形だが、このところWTIの値上がりが目立っている。アメリカは景気回復、金融の量的緩和政策、株価の値上がりが押し上げ要因となっている。
エネルギー経済研究所が10日に発表した原油価格の短期(7月~12月)見通しでは、ブレントが100ドル/バーレル、WTIが95ドル、ドバイが98ドルと予測している。今後も国際原油市場は、様々な要因によって大きく変動するが、今後の下振れ要因としては、中国、インドなどの新興国経済、欧州経済の想定以上の減速、アメリカの量的緩和策の縮小などがあげられる。一方、上振れ要因としては、地政学的リスクとしてリビア、イラクの減産、輸出減、エジプトなど反政府運動の拡大により、2年前のアラブの春」のように中東、北アフリカに拡散することになれば再び急騰も予想されるとしている。
直近の原油の動向をみると、今年の1月~3月は、ドバイが105ドル~110ドル(平均で108ドル)と高値、為替は円安で推移したためコスト増となった。4月~6月は原油価格が100ドル前後に値下がりとなったため、4月~5月の仕切価格は値下げとなったが、国内のガソリン市況は、春先の予想外の減販により需給が緩和したこともあり、業転市況が下落したため、これに連動して末端市況も急落した。その結果、4月~6月の元売の業績は、2月~3月の高値原油を下落した末端市況で販売する逆ザヤ状態となり、赤字となった。だが、7月に入って原油価格が値上がりとなったのを機に、仕切価格の値上げに取り組むこととなった。
足元の原油価格は値上がり基調で推移しているが、需給面からみると世界の需要は伸び悩みから値下がりとの見方もあり、また、原油は需給のみでなく、金融商品となっているため、思惑も絡んだ値動きをするため予想難となる。
需給面から値下がりが予想される要因としては、アメリカでのシェールガス・オイル革命の進展で増産となり、ガスが世界的に供給増になってきたため、ロシアのヨーロッパ向けのガスは、行き場がなくなり日本へ輸出が計画されるなど流れが大きく変わってきた。また、カナダのオイルサンドも増産となっているため供給増となっている。一方。需要サイドは、中国など新興国の景気の減速で、石油需要の伸びも止まり需給バランスが緩和の傾向にあるため原油は下落するとの見方もある。
現在の値上がり状況がいつまで続くか不透明であるが、エジプトの政情不安による先高感を見込んで、これまでの下げ過ぎ分の回収を急ぐことになる。