日刊ニュース

2013.07.31 のニュース

基礎試錐 佐渡沖は兆候確認できず-大水深での掘削もデータ取得まで-

 国の基礎試錐として実施されていた新潟見佐渡南西沖の試掘作業(実施主体はJX日鉱日石開発)が終了した。結果については「顕著な石油・天然ガスの徴候は確認できなかった」と発表された。「地層の一部で微量の石油・天然ガスの兆候を確認、今後の開発を判断していく上で必要となる岩石サンプル(コア)の各種地質データを取得した」と加えている。
 今回試掘した佐渡南西沖30キロメートルの地点にある「上越海丘」の海底水深1130メートルの大水深を、海底面下1950メートルから約3000メートルの地点までを4月14日から7月20日にかけて地球深部探査船「ちきゅう」で掘削したものである。日本周辺海域では初めての1000メートルを超える大水深での掘削となった。
 この地域は平成20年に行なわれた3次元物理探査船「資源」による探査の結果を踏まえて、今回、「ちきゅう」による試掘となり、日本の掘削技術の成果が注目されていたもの
である。
 商業ベースの試掘であれば、石油・ガスの徴候が確認されなければ失敗となるが、国の基礎試錐は、地層からの各地質データを取得するのが目的であるため、予定の深度まで掘削した段階で目標を達したことになる。今後は、今回の試掘調査で得られたコアや各種データを解析・評価作業を実施し、試掘地点周辺における石油・天然ガスの存在状況の確認'、今後の探査調査の可能性の検討を行なうことになる。
 ただ、掘削の開始時には中東の中規模程度の油・ガス田が存在する可能性があると、大々的に取り上げていただけに、油・ガス田の発見に至らなかったことは期待外れとなった。基礎試錐は本来、油・ガス田を発見するのが目的ではなく、存在状況を確認するためのポテンシャル調査であるため、目標とする地点まで掘削することで、その地層から採取したコアやデータを取得し、周辺の開発を判断する情報を獲得するものであり、その意味では、目的を達成したことになる。だが、約100億円をかけた掘削には、油・ガス田の発見が、当然、期待されていた。
 過去の基礎試錐においても、即、商業化となる油・ガス田を発見したケースはほとんどない。商業化が可能な鉱区の試掘は、民間企業が行なうことになっており、リスクが伴うため、国が補助金を支給して実施するものであり、今回は、鉱区を取得しているJX日鉱日石開発に委託して実施された。
 掘削して即、発見となる確率は極めて低く、今回の基礎試錐は石油開発の難しさを実証したことになる。掘削開始時の発表で油田が発見されるかのような印象を与えたが、「掘
ってみないと分らないのが石油開発である」と以前より言われている。
 福島原発事故以降、石油火力、LNG火力へのシフトが拡大し、石油・LNGの輸入数量が増大したことで、貿易収支が赤字、電力料金の値上げなど日本経済への影響が懸念されている。そのため、安価なLNGの輸入が政策課題となり、現在、天然ガスの安定確保を推進している。
国内の石油開発への期待は大きく、基礎試錐、メタンハイドレートなどの開発が注目を集めているが、国内の石油開発は、現実問題として厳しいものとなっている。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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