2013.08.12 のニュース
転嫁不足の背景にある格差
4週連続の仕切り大幅値上げに対して、その上げ幅に見合った小売価格を実現できたSSは、まだ極めて少ない。7月上旬比で9円高を実現して、ようやく帳尻の合う上げ幅だっただけに、その労力は並大抵ではないことが想定できる。残念ながら直近までの小売価格変動からは、多くのSSが転嫁不足を抱えた状況で、夏商戦で最大の書き入れ時となる旧盆商戦に入る。
今回の連続値上げで、半分に満たない転嫁にとどまっている概況の石川や福井などでは、その安売りの中心軸に、どうやらPBがいる。恐らくは、そのPBの販売姿勢に、系列の地域有力店がこぞって対抗手段を講じているのだろう。関東でもホームセンター系のPB巨艦SSは、依然として150円割れであり、それを取り巻くように、元売子会社SSと燃料商社直営SSが同水準で追従している。
特殊な顧客形態を有するSSを除いて、通常のSSの価格耐久力は5円に満たない。3円以内が限界ともいえる。これから長期にわたって市場規模の縮小が見通される中にあって、現状の顧客の支持基盤と同義である数量を防衛することは、一方的に糾弾されるべきではないだろう。同一商圏内で5円高で売っても、顧客の支持基盤を失わないというビジネスモデルを、我々はまだ知らない。
同一市場におけるガソリン卸について、数量インセンティブと系列・業転格差の全合計は、3円を上限とする、という考え方が、SS小売業の視点だ。この希望値を具体化・達成するには、元売はなにをすればよいのか。一笑に付すのではなく、実現に踏み切ってほしいのだ。
多くの地域特約店は、たとえばこの5年間、総じて、異業種SSやPB、さらには元売子会社SSに、顧客からの支持基盤を明け渡し続けた履歴が残る。これ以上の、安値によるライバルの強奪を許容はしない、という決意の形が、ひとつは安値追従であり、そうした不公平な仕組みを出現させないように求めた公取委・調査報告書が求めている改善勧奨である。
公平な土俵の上で、立地やスタッフ対応、油外収益力などのSS総合力で勝負する市場。卸の段階で勝負が決する世界と決別するための、仕切制度改革・リセットに期待したい。そうすることで、自ずと公取委の不当廉売判定が機能し、破格値はなくなる。