2013.09.02 のニュース
エネルギーコスト高を議論-国民負担による電気料金値上げ-
総合資源エネルギー調査会基本政策分科会は27日に第2回会合を開き、「エネルギー政策の基本的視点(3E+S)に関する最近の状況」について審議した。事務局(経産省)からはエネルギーの国際情勢、エネルギーコストの影響、安定供給体制の強化策などについて説明が行なわれた。
安倍政権の誕生を機に、総合エネ調も新体制で発足した。今回は2回目の会合であり、年内にはとりまとめを行なうが、委員も交代したことから方向転換した。原発を巡っての対立軸も消えており、これまでの議論を踏まえて、再度、審議となるが、原発問題(依存度など)は後回しとなっている。
エネルギー政策も原発を除けば、前回のエネルギー基本計画とは大きな差はない。発送電分離の電力システム改革(電事法の改正)は、先送りとなっているが、原発については原子力安全規制委員会が認めたものは再稼働を認める方針である。新基準の設定、安全神話から脱却した自主的安全性の向上などの対策に取り組むことになる。だが、現実には再稼働が難しいため、その不足分をLNG、石油、石炭火力でカバー、さらには再生可能エネルギーを推進することになるが、これらの対応によるコスト増を、国民負担という形で電力料金の値上げを行なっている。
電力サイドも原発の再稼働を織り込んで料金を査定しているが、再稼働が遅れると収支が悪化する。原油、LNG価格の値上がり、再生可能エネルギーの固定買取制によるコスト負担などの転嫁という問題も抱えている。そのため、現行のエネルギー政策を推進することになり、その説明と今後の政策推進(予算要求)の支援策の拡大がテーマとなっている。
エネルギーコストの経済影響については、原発の稼働停止で火力発電シフトすることになり、LNG、石油などの燃料費が増加した。2000年度が約3.6兆円であったものが、原発の停止により11年度が5.9兆円となり2.3兆円の増加、12年度では7.0兆円となり3.1兆円の増加、13年度は3.8兆円の増加が推計されている(一人当たり3万円の負担となる)。
この燃料調達費が増大した結果、11年には我が国は31年ぶりの貿易赤字に転落した。12年には貿易赤字は6.9兆円に拡大、12年度ベース(4月から翌年3月まで)は8.2兆円の貿易赤字となった。また、13年7月分の貿易収支は1兆240億円の赤字となり、月ベースの赤字としては過去3番目の高水準なっている。
赤字の要因はLNG、原油価格の値上がりと輸入数量の増加となる。原油価格は、リーマンショックにより08年後半から急落したが、その後は再び上昇しており、足元は100ドル/バーレルを超えている。また、LNGは福島の原発事故を機に高値となっている。一方で、米国ではシェールガスの生産拡大に伴い、米国内の天然ガス価格が低位で推移しており、日米のガス価格差が問題となっている。日本側の価格交渉力が問われているが、米国に対してLNGの輸入を促進するよう交渉を続けており、その成果あって、近く輸入が解禁となる。さらには天然ガスを自主開発することで供給増を図るために、国による支援策として、探鉱開発予算を拡大している。