日刊ニュース

2013.09.20 のニュース

「総合エネルギー産業化」構想-各社、海外展開含め対応進める-

 第4回総合資源エネルギー調査会基本政策分科会は17日、省内で開催され、①資源確保戦略、②強靭な石油・LPガスのサプライチェーンの構築について審議した。エネ庁の平成26年度予算要求に織り込まれている石油政策について、住田孝之資源・燃料部長が説明、石油精製・元売の将来戦略として、石油コンビナート内外の連携強化を図りながら上流権益の開発、電カ・ガスなどのエネルギー事業の強化による「総合エネルギー産業化」の構想を打ち出している。
 石油コンビナートの連携強化策は、現在も「リンク」という名称で、同一コンビナート内の連携を対象に、製油所、石化工場内の留分融通による生産性の向上を狙い、事業所間の配管設備石化・用役等の強化、集約化等の支援で予算を計上している。今回は26年度予算の新規事業として35億円を要求しているもので「資本の壁・地理の壁」を越えた設備最適化を推進する計画である。これまでの「同一コンビナート内」に限らず「地理的に離れたコンビナート間」連携も支援の対象とし、複数の製油所の「総合型の運営」により設備の最適化促進を支援するものである。
 日本のコンビナートは小規模分散型で非効率であったものを、総合型運営により、設備の共有化・集約化により、効率的な運営を行なうことで国際競争力の強化を図るものである。エネルギー高度化法による精製設備の処理は来年3月末で完了するが、その後の対応策として、ポスト高度化法を睨んだ構想となる。エネ庁としては26年度予算の新規目玉策であり、総合エネ調の場で審議することで予算を確保する狙いがある。
 一方、石油精製・元売のコア事業である燃料油、潤滑油、基礎化学品の生産・販売は、需要の減少を背景に需給バランスの悪化、マージン減少などで中・長期的には厳しいため、石油各社は海外展開などを含めて「総合エネルギー産業化」にすでに取り組んでいる。JXは「世界有数の『総合エネルギー・資源・素材企業グループ』への歩みを進める」としている。
 上流の石油ガス開発には、元売ではJX、出光、コスモが取り組み開発・生産しているが、その生産規模は小さい。また、電力事業は自由化を機にJX、昭和シェルがLNG火力発電の事業化を推進している。これらを足がかりに将来は石油・ガスの開発、電気、ガスなどのエネルギー事業の強化による新体制の確立を目指すことになる。
 海外展開については、石油化学事業における韓国での合弁事業として、パラキシレン製造でJXがSKと、コスモがヒュンダイと推進している。昭和シェル、太陽はGSカルテックスの製造装置の建設を検討中である。出光は三井化学とペトロベトナム、クウェート石油と連携で石油化学コンビナートの建設を開始している(2017年に運転開始)。
 海外展開となると、投資にはリスクも伴うため、慎重さと積極性の双方が求められる。投資の予測を誤ると経営の存続にも係るため慎重となるが、タイミングが遅れるとビジネスチャンスを失うことになる。また、投資の時期と生産の時期とのタイムラグもあり、生産開始時期の為替相場、原油価格、海外の市況など多くの不確定な要因が重なるため、生産・販売開始の時期になって収益を回収できるかの予測は難しい。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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