2013.09.24 のニュース
新しい総合エネ産業構想も-足元の業転格差、過疎化問題を議論-
石油業界を取り巻ぐ環境は大きく変化しており、エネ庁も精製・元売は「総合エネルギー産業」、販売業界には「総合エネルギー販売業」という新しい体制づくりを打ち出している。その構想を後押しするための予算措置、支援策を講じており、総合エネ調でも議論している。
精製・元売は国内需要の減少が続くことから、①石化、製油所の海外への事業展開、②石油コンビナート内外で資本・地理の壁を越えた連携の強化による競争力の強化、③上流権益の開発や電気・ガス等のエネルギー事業の強化による「総合エネルギー産業化」を推進する構想を提示しており、すでに各社とも、総合エネルギー企業を目指して取り組んでいる。また、販売業界には、問題となっている業転と系列仕切との価格差が存在する場合は公取委と連携して対応するとしており、元売との調整を要請している。さらに喫緊の課題としては、SSの過疎化問題がクローズアップされている。
長期的にはEV、燃料電池車の普及に備えて、燃料販売のみに依存しない新しいビジネスに転換する次世代SSの実証事業を実施している。燃料電池車への水素供給やEVへの電気の充填を行なう「総合エネルギー販売業」としての展開を狙う。次世代SSは、水素ステーションによる新規事業開拓の取組みが期待されるが、水素ステーションの設置は巨額な投資を伴うため元売ペースの取り組みとなっている。販売業者は、現在のSS形態から次世代SSへの転換の対応が難しく、むしろ普及の遅れを期待している実態である。
ところで、国内の石油製品需要は今後も年率1~2%減少が続くことになる。そのため設備処理が進められており、トッパー能力もピークの600万バーレル/日から08年4月には490万バーレル/日(28製油所)と減少、さらに高度化法に基づく設備処理で来年4月には約390万バーレル/日(23製油所)となる。これにより製品需給が安定することで適正マージンの確保が期待されている。しかし、トッパーの能力が減少しても2次設備は増強となり、ガソリンなどの生産量は確保されるため需給は締まらないと懸念する見方もある。
一方、販売業界では、SS数はピーク時に約6万ヵ所あったものが、今年3月には3万6349ヵ所に減少した。消防法の改正により、老朽化したSSに対して地下タンクの補強が義務付けられたため、廃業する業者が増えたこともありSSの減少が加速した。そんななか、セルフは8852ヵ所と増加している。ガソリン販売数量は、省燃費車の増加で向こう5年間は年率1.7%の減少が続く見通しである。長期的にはEV、燃料電池車の普及が予想されるため、ガソリン販売は大幅に減少、SSの減少に歯止めはかからない。
東日本大震災ではSSの重要性が認識され、サプライチェーンの維持・強化が要請されているが、経営難から「SS過疎化」問題が増加している。全国の市町村でSS数が3ヵ所以下の地域は256ヵ所あり、とくに高齢者の灯油の供給確保が問題となっている。その対応策として、自治体、地元住民によるSS運営、共同配送などが実施されているが、厳冬下の灯油の供給確保は生命に係る問題であるため、国の支援策が求められている。