2013.10.07 のニュース
78万バレルという巨人誕生への道
日量38万バレルの原油処理能力を有する国内最大のJX水島製油所も、その大本は、倉敷・水島湾を挟んで向かい合っていた旧・三石、旧・日鉱の2製油所の合体形であった。コスモと極東の千葉製油所が共同事業を検討することが明らかになったが、この2製油所の能力は合計41・5万バレルとなり、JX水島を上回る。
内需が縮小する時代を迎え、規模の大きさがそのまま競争力につながる訳ではないだろうが、隣国の韓国の製油所は、平均規模が日量57万バレルの原油処理量を有するという。しかも石油の極東ハブ化を国策として掲げ、製品輸出を前提に組み立てられた石油と石油化学の大規模コンプレックスという。
そこには、国内では当たり前の、ガソリン生産能力過剰という類の話題は、ほとんど聞かれない。フル稼働によるフル生産が当たり前で、まず成長著しいアジア向けの大量輸出ありき、という前提で生産工程が練られる。しかも、その固有の規制環境によって生じるコストが国内よりも割安というから、JXもコスモも、昭シも太陽も、国内精製の石油起源のパラキシレン原料を、韓国の合弁工場に仕向ける。
規模では完全に韓国勢の後塵を拝するものの、日本の製油所が優位性を有するのが、分解・改質などの2次装置群だ。
重質ナフサを水素気流中で高温・高圧において、触媒を用い、高オクタン価ガソリンにする装置・リフォーマー。基礎化学原料となる芳香族製造装置としての位置付けも有しており、石油化学を事業領域に有する元売において、ここ最近の収益を下支えしたベンゼンもここから生み出される。
重油留分を触媒の作用によって分解し、低沸点の炭化水素に変換するFCC。ガソリンはレギュラーガソリン相当のオクタン価を持ち、ここから得られるLPGは、プロピレン、ブテンなどを多く含む。
これらの2次装置は、個々の製油所が立地するコンビナート特性に準じて装備されるケースが多く、各装置の装備率が大きく異なる。製油所の共同化。それは、1人よりも2人が得意分野を生かすことで、大きな力を発揮するという人間の取組みに似ている。千葉の場合、コスモと極東の2人に加えて、地理的に3人目の出光、4人目の富士が加わることも可能に見える。4人の力を合わせれば78万バレルという巨人が育まれる。