2013.10.10 のニュース
灯油値上げが本格化へ-ブランド料引き下げ分を確保-
灯油シーズンも近くなり、「灯油高のガソリン安」の価格体系となってきた。東商取の先物の灯油が78円/リットル、ガソリンが74円となっているように、例年10月になると灯油高に逆転する。今冬は、ガソリンのブランド料が引き下げとなることから、この引き下げ分を灯油の値上げでカバーする狙いもあるため、より灯油高の体系となるようである。
灯油は、これから値上げに取り組むことになる。ガソリンの仕切価格が値下がり局面でも灯油は値上げとなるが、それだけ灯油は季節商品であるため一気に値上げして利益を確保することになる。ただ、需要地が北海道、東北などの寒冷地に限定されるため、元売、販売業者とも、短期間で利益を確保することで商戦に臨むが、それには夏場での在庫の積み増しによるコスト増もあり、加えて販売は天候が大きく左右するためリスクを伴う商品となっている。
暖冬になれば需給バランスが崩れ市況が急落して大損となるケースもある。逆に厳冬になれば増販となり、供給不足となって値上がり利益を確保できる。そのため寒波の到来の時期がポイントとなるが、寒冷地の需要はすでに織り込み済みであり、大消費地の関東、関西地区が冷え込むと販売数量が増加する。だが、都心部では灯油の暖房は減少しており、電気・ガスヘの転換が進んでいるため増販は見込まれない状況にある。
東日本大震災直後は、灯油、LPG暖房など石油の重要性が認識されたが、現在では「灯油は割高である」「重くて取り扱いが難しい」「利便性を欠く」などの理由で電気、ガスに燃料転換している。そのため灯油の需要増は見込めず、今後も減少が続く見通しとなっている。灯油の需要減を灯油暖房機器の開発の遅れによると指摘する向きもあるが、利便性ではどうしても劣ることになる。
また、寒冷地での暖房は火力面からみると灯油暖房が優れているが、大消費地の関東、中部、関西地区での灯油販売が増加しないところが致命的である。灯油販売の昨年のピークは12月で338万キロリットルとなっているが、最盛期の500万キロリットル超に比べると大幅に減少している。
元売サイドは、ガソリンは需要期の夏場に向けて値上がりし、冬場には灯油が値上がりすることで油種ごとにバランスよく、年間の利益を確保している。寒冷地の販売業者も冬場の灯油で利益を確保して一息つく。だが、都心部は灯油販売が少なくなっており、ガソリンのみがマージン確保の商品となる。
元売は今冬、ガソリンのブランド料を1円引き下げることもあり、このマイナス分を灯油の値上げでカバーすることになる。ブランド料の引き下げによって業転との価格差を是正することになるが、業転を値上げすることが難しいため、灯油などの他油種の値上げを狙うことになる。ガソリンの業転を値上げするには需給を締めることが条件となるため、各社とも10月以降は減産で対応しているが、その前提となる販売数量が予測よりも減少すると供給増となる。
秋の製油所の定期修理が実施されているが、これから需要期に向かい基調は増産対応となる。だが、製品輸出が好調であり、需給はタイト気味で推移しそうなため、ガソリン、灯油が値崩れすることなく、思惑通りの価格で値取りができそうである。