2014.01.20 のニュース
原発問題 都知事選絡み慎重論も政治的配慮か、エネ基本計画が遅れる
エネルギー基本計画が閣議決定される直前に、原発問題が東京都知事選挙の争点となってきた。細川元総理が、小泉元総理の支援を受けて「脱原発」を旗印に選挙を戦うことになり、一気に原発問題が浮上してきた。そのためか、エネルギー基本計画の閣議決定か1月末の予定であったものが遅れることになった。
遅れる理由としては、原発問題についてパブリックコメントを募集しているが、その件数が1万9000件あり、その意見を検索するにも時間かかかることや、原発施策を巡っての意見が都知事選の争点となることも影響したものとみられる。いわゆる政治的な配慮となるが、原発問題は国政レベルの問題であり、東京という地方自治体が取り上げる問題ではないとの指摘もある。だが、マスコミの扱い次第で大きく影響するとみられ、政府、自民党の対応も慎重となっている。
原発問題は国のエネルギー政策の柱となっており、総合資源エネルギー調査会で議論を重ね、昨年末にエネルギー基本計画(案)を取りまとめた。計画(案)での原発の位置づけは①基幹となる重要なベース電源である、②原発依存度を限りなく低減させる、③新規規制基準の下で安全が確認された原発は再稼働を認める、④使用済みの核燃料は現世代が責任者となるとしている。
しかし、「重要なベース電源」とは何かとなると構成比が求められるが、今回は数値を示さない。再稼働が議論されているためであり、理論的に詰めると不透明である。また、「限りなく低減する」についても、いつまでにどの程度なのかハッキリしない。数値を示すことは避けており、このような抽象的な表現であるため解釈次第となる。
東京都は東電の株式を保有しており、東電に対して発言権を行使できるため、原発再稼働の停止、脱原発の提言が可能である。束京は電力の大消費地であるが、福島、新潟などの他県の原発から電力の供給を受けている立場にあり、都民の立場も複雑である。脱原発が選挙の争点となれば、原発ゼロの方針が打ち出されることになり、いつまでに原発をゼロにするのか、現実的に原発ゼロが可能であるのか、原発をゼロにするまでの工程表なども求められる。また、現在、原発が停止(ゼロ)しているが、電力不足で国民(消費者)が混乱する状況にない実態である。その反面、LNG、石油火力にシフトしているため燃料費が高騰しており、輸入増で貿易赤字となり、日本経済には大きな影響を与えている。そのため安価なLNGの調達、再生可能エネルギーの確保が重点策として推進されている。
一方では、原発の再稼働で電力会社は業積の回復を狙っている。現に東電の再建計画では柏崎刈羽原発の再稼働による利益確保が織り込まれている。だが、福島のような事故、最終処分のコストまで加算すると原発は高くなるとの意見も多い。廃棄処分の技術も確立されていないため、原発ゼロも難しく、運転をしながらな技術開発を待つというジレンマがつきまとうことになる。
小泉元総理は「原発ゼロでも発展できるとみるか、原発がないと発展できないと見るのかの対立である」と対立軸を鮮明にしており。都民の選択が注目される。