日刊ニュース

2014.02.10 のニュース

精製・販売の赤字は長期化-石油開発、石化でのカバーが続く-

 海外の石油業界では、下流(精製・販売)で儲けることが難しく、上流(石油開発業)で利益を確保することになると言われているが、日本も同様な状況となりそうである。売上高の90%を占める精製・販売の赤字を石油開発、石油化学での黒字でカバーする歪な体制となっている。
 足元の日本の精製・販売は、原油高、円安によるコスト増となっているが、価格競争で転嫁できずに製品マージンは悪化(縮小)しており、実質赤字となっている。原油高、円安のコスト増で在庫評価益が発生しており、決算の数字では黒字であるが、在庫評価益を除くと赤字となるのが実態である。上期が赤字となり、下期の需要期で挽回することを見込んでいたが難しくなってきた。コスト高が続いているが、需給も安定した状態にあり、長期にわたってマージンが確保できない状況が続く異常な事態となっている。
 原油CIF価格でみると12月の平均が7万2000円/キロリットルの高値となり、1年間で約2万円(20円/リットル)の値上がりとなったが、このコスト増を転嫁できず、ガソリン、灯油などは高値による消費節約から予想以上に減販となっていることもあり、値取りができず元売、販売業者ともマージン減となっている。
 原油CIF価格と末端市況との差のグロスマージンを元売と販売業者が分け合うことになるが、これが縮小しており、双方が赤字となっている。元売の仕切価格はコスト上昇分を値上げしているが、末端市況の転嫁が遅れていることもあり、満額を転嫁ができずに今日におよんでいる。週決めの価格改定では、未転嫁分が残るため値戻し値上げを試み実施したが、これも空振りとなった。
 販売業者に対しては、マージン減少の対応として油外収益を確保するためのタイヤ、オイル、整備、車検、カーリースなどの事業展開を指導しているが、マージンの確保なくして収益の改善は難しい。販売業者がマージン確保できない状況では、元売は仕切価格の値上げが困難となり、ますます双方の業績が厳しくなる悪循環が繰り返されている。
 ガソリンの業転問題が販売業者サイドから指摘されているが、この問題が表面化したことから、さらに価格差が拡大する皮肉な結果となっている。業転の比率が20%と増加しており、系列仕切との価格差が目立つことになるが、これ以上増加すれば、価格体系の維持も難しくなるため、元売でも新しい体系が検討されているが回答は出ない。現状では、元売、販売業者とも負け戦となっており、これでは共倒れとなる。
 結果的には、元売各社の業績は、精製・販売の赤字を石油開発と石油化学の黒字でカバーしている状況が続いている。石油開発は、原油高、円安によるコスト高で利益を確保している。原油CIF価格が7万2000円/キロリットルとなっているため、生産中に原油・ガス田では利益が見込まれる。石油開発業は、リードタイムが長く、リスクが伴うが、発見して生産ができればリターンも多い。
 石油化学は、海外市況次第という状況となるが、海外市況が堅調でありマージンは確保されている。今後は新興国の経済発展と石化ブラントの新増設とのタイミングとが絡んでいるが、市況が維持できるのか見通しは難しい。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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