2014.03.03 のニュース
総合エネルギー産業化を目指すも-石油事業の赤字継続が深刻化-
石油産業の基盤再構築を狙って、石油・天然ガス小委で石油政策の検討に入っているが、足元の石油各社の石油事業は赤字であり、深刻な状況が続いている。石油連盟も今年は「総合エネルギー産業化」を目指すとして、新しいステージを迎えるとしているが、赤字では再投資どころか経営基盤が揺るがされる事態が懸念されている。
総合エネルギー産業化では、国内の石油需要の減少に対し、海外展開(製品輸出、潤滑油事業への参入、石化事業への進出)、石油・ガス開発、競争力強化のための製油所・コンビナートの連携強化、電カ・ガス事業への進出などに取り組むことになる。すでに、各社は得意分野で先行して取り組んでおり、今後、業容を拡大することになる。この方針に沿って、夏には政策をとりまとめる。
新石油政策の打ち出しを前に、現在、過剰設備の解消を図り、設備削減を3月末で完了することになっている。当初の予定では設備処理が順次行なわれるため、今頃は需給も正常化されて需給は安定して推移、新しい方向性が示されるとみていた。だが、現状では市況が低迷してマージン減の状況が続いている。
石油各社の平成25年4~12月期の決算でみると、石油事業では在庫評価益を除くと赤字となり、深刻な状況にある。3ヵ月単位でみると4~6月期は赤字となり、7~9月期の夏場で持ち直し黒字となったが、10~12月期で再び赤字に転落、今年1~3月期も赤字が見込まれている。連結決算では石油化学、石油開発が石油事業の赤字をカバーして黒字となっている。だが、売上品の90%を占める石油事業が赤字となっている。
赤字の要因は「需給バランスが崩れ市況が低迷したためマージンが低下した」ことが決まり文句となっている。需給バランスは、夏場の猛暑でガソリン販売は増加したが、その後は減販となり、製油所が再稼働したことから供給増となり、秋口から需給バランスが崩れ、業転玉が出回り、業転市況が下落したことになる。
同時に業転と系列仕切との価格差問題が表面化した。結果的にはブランド料の引き下げを実施したが混乱が続いた。市況下落が続いたため10月半ばに下げ過ぎを是正するため、仕切価格を3円/リットル強~4円/リットルの値上げを実施した。この値上げに対して、販売業者から説明不足であるとの反発もでたが、結果的には達成できず値下げとなった。このときJXは据え置きとしたが、11月中旬から6円40銭の大幅値下げで調整することとなった。その結果、値戻し値上げが不発に終り、以後、その後遺症からコスト増が回収できずに赤字で推移。この時点がポイントとなり明暗を分けたことになる。
原油価格(ドバイ)は105ドル/バーレルの高止まり、為替が100円/ドルと前年に比べ20円の円安となり、この円安分のコスト増が転嫁できない状況が続いて今日に及んでいる。原油CIF価格は7万5000円/キロリットル(75円/リットル)となっており、これに石油税2290円を加えると7万7000円強(77円)となる。先物、業転市況と同値となり、これでは赤字となる。業転に比べ系列仕切は5円程度の高値となるが、マージンは低下しており利益は確保できない。主力商品であるガソリンが赤字であれば、石油事業は大赤字となる。