2014.05.14 のニュース
円安コス卜増未転嫁で石油は赤字-石油開発は大幅増益で明暗を分ける-
石油各社の3月期決算が発表されたが、石油事業は円安によるコスト増の転嫁ができず赤字(在庫影響を除く)となった。一方、石油開発会社、石油開発事業は、原油価格が前年に比べると値下がりしたが、105ドル/バーレルの高値で推移、加えて円安で原油、ガスなどの販売価格(円/キロリットル換算)が値上がりしたことで増収、増益となった。為替の影響が石油事業はマイナス、石油開発にはプラスに働き、明暗を分けたことになる。
2013年度の為替平均は101円/ドルで前年の84円/ドルに比べると17円の円安(20%増)となった。原油価格はドバイで105ドル/バーレルで前年に比べると2ドルの値下がりとなったが、石油事業は円安分のコスト増の転嫁ができず赤字となった。一方、石油開発は円安による販売単価(円/キロリットル換算)の値上がりで増収、増益となった。
石油事業ではガソリンなどの在庫は低位で推移したが、減販による需給バランスの崩れから業転が安値となり、マージンが低下した。今年3月末でのトッパー処理が決まっていたため、実需を上回る駆け込み増産・増販策と、需給調整を図るため市中買いが停止されるなど、夏場から業転市況が安値となった。ガソリン業転市況は原油CIF価格(プラス石油税)と同値、C重油よりも安値となるコスト割れの異常な状況となった。それでも下期で挽回を狙ったがマージンは回復せず、今年の1~3月も赤字が拡大する状況となり、さらに悪化して赤字幅が拡大した。
各社のセグメント別の石油事業をみるとJXは、在庫影響を除くと775億円の経常損失、出光が221億円の営業損失、富士石油は101億円の経常損失となっている。富士の場合は、1製油所での大型定期修理で約2ヵ月間操業が停止したため、大幅減販の影響から赤字となった。
14年度の見通しでは、ようやくマージンが確保できる状況となり、石油事業でも黒字を見込んでいる。設備処理に定期修理が重なり、需給タイトで業転市況の値上がりを見込んでおり、加えて6月からの新体系への移行でマージン増を見込んでいる。
石油事業は赤字となったが、石油化学、石油開発が黒字となったため、連結の純利益ではJXが1070億円、出光は363億を確保している。一方、石油・天然ガス開発事業でみると、円安効果でJXの経常利益は1055億円(前年比で13%増)、出光は営業利益は325億円(69億円の増益)を計上している。
石油開発企業の国際石油開発帝石では、純利益が1836億円で前年比で7億円の微増であるが、過去2番目の高水準であり、1940億円(11年度)に次ぐ好決算となった。売上高は1兆3346億円で前年比1180億円の増収となった。ドルベースの単価は減少しているが、円ベースでは円安で2119億円(原油が1491億円、ガスが628億円)の増収となっており、この増収分がほぼ利益となる。円/キロリットル換算の国内の原油単価も円安で平均6万800円となり約4000円の値上がりとなっている。
石油資源開発は、純利益が290億円となり前年比で299億円の増益となった。前年は勇払ガス田の資産減少による減損の計上で純損失が9億円となったためで、13年度で一気に黒字回復した。