日刊ニュース

2014.05.15 のニュース

石油の赤字決算で両者に温度差-業転安で仕切値下げの要求出る-

 石油各社の3月期決算が発表されたが、石油事業は、原油価格が円安により円ベースでは値上がり、在庫評価益が発生したため黒字となった。だが、コスト増が未転嫁となったこともあり、在庫評価益を除くと赤字となっている。石油事業では実質赤字となっているが、石油化学、石油開発が円安により販売単価が値上がり増益となったため、連結では石油事業の赤字をカバーして黒字となっている。
 JXの業績をセグメント別でみると、エネルギー事業(石油製品と石油化学)の経常利益は1082億円となっている。だが在庫評価益が1161億円あり、これを相殺すると79億円の赤字となる。その内訳をみると、石油製品は在庫影響を除くと775億円の赤字となっているが、石油化学が696億円の黒字となり、相殺するとエネルギー事業では79億円の赤字となる。うち石油・天然ガス事業は1055億円の黒字、金属事業が474億円の黒字などで連結経常利益は3023億円となる。在庫影響を除くと真水の利益は1830億円となる。純利益は、前年比で33%減であるが1070億円となっている。
 出光は、石油製品の営業利益は189億円となったが、在庫評価益が410億円あり、これを除くと221億円の赤字となっている。石油化学は365億円、資源が245億円(うち石油開発が325億円、石炭は80億円の損失)などで連結営業利益は782億円、在庫影響除きで353億円の黒字となっている。利益は前年比で28%減であるが363億円となっている。
 このように決算上の数字では、前年比では減益となっているものの黒字となっているため、まずまずの決算という見方もできる。だが、在庫影響を除くと実質的には赤字であるため元売は危機感を強めているが、販売業者、ユーザーサイドでは黒字の数字を額面通り理解するケースもある。最近は、在庫影響については、投資家、株主などは理解しているが、販売業者、ユーザーの理解を得ることは難しいところもある。
 販売業者サイドでは、黒字決算の数字をみて業転安を指摘、「元売は黒字で儲けており、その結果、安い業転玉を放出している。系列仕切価格を業転並みに値下げすべきである」との要求が出ている。安値業転が出回っていることから、あえて、元売が赤字となっている実態の理解を避けている面もあるが、元売に余力があるとみている。長期に亘って販売業者も赤字が続いているため、
元売の赤字決算の捉え方に温度差がある。また、業転と仕切価格との価格差拡大から、仕切価格が調整されているとの噂が常に出ている。販売業者が仕切価格の値下げを要求する声が多くなっているためである。
 元売は、2年連続の赤字を避けるため危機感を強めており、マージン増を狙っている。設備処理を実施しており、さらには製油所の定期修理と重なるため、需給がタイトとなることで業転市況の値上がりを見込んでいる。加えて6月から仕切価格は新体系に移行するためマージン確保が期待されている。仕切価格の発射台を高くしてマージン増を狙うが、そのためには、需給が締まり業転市況が値上がりして、仕切価格との価格差が縮小されることが前提となる。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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