日刊ニュース

2014.05.16 のニュース

内需減で備蓄水準の見直しも議論-産油国、アジアでの共同備蓄は推進-

 備蓄政策のあり方について、総合エネ調の石油・天然ガス小委で検討に入っているが、①内需の減少が続く中で、将来も備蓄数量を維持すべきか否か、②現在、推進している「産油国共同備蓄」を再考、整理すべきである、③セキュリティの向上からアジアでの共同備蓄にどう対応すべきか、④需要側における「自衛的備蓄」を推進すべきである、④備蓄放出スキームの見直し、などが課題とされている。これらの課題、政策を推進するには予算措置を伴うため、夏頃にはとりまとめ、来年度の新政策、予算要求に織り込むことになる。
 現在の備蓄数量は、備蓄法により109日分、うち民間備蓄は82日分(義務日数は70日分)を保有している。しかし、国内需要の見通しでは5年間で年率1.7%減、全体では8.4%減となっており、内需の減少を背景に備蓄量の引き下げ要請が出ている。国備も5000万キロリットルを97年に達成しており、このまま維持か、積み増しか、引き下げかなど、今後の方針を打ち出すことになる。
 産油国との共同備蓄については、UAE、サウジの国営会社に国内(沖縄石油備蓄とJXの喜入基地)の原油タンクを貸与して、各100万キロリットルの原油を備蓄している。平時は、国営石油会社が東アジア向けの供給・備蓄拠点として商業的に活用しているが、危機時にはタンク内の原油を我が国の石油会社が優先的に購入できることになっており、「第3の備蓄」として活用できると評価されている。危機対応の確実性をどのように担保できるかを見定めた上で、この構想を再検討しながら拡大する方向となりそうである。
 アジアでの共同備蓄構想については、ERIA(東アジア経済統合を目的とした政策研究機関、26ヵ国が参加)と連携して備蓄・危機管理の強化に向けて「協力の枠組み」のあり方を調査、検討しているが、この調査を活用しつつ、日本のスタンスを固める時期にある。
 需要側の「自衛的備蓄」については、災害直後は交通網が混乱して石油・LPGの供給が難しいため、社会的に重要なインフラである政府・自治体の庁舎、放送、金融、学校、避難所などでの石油・LPGの備蓄を要望するものである。また、個人の各事業者、世帯レベルでのガソリン、軽油、灯油などの備蓄と、こまめな補給が求められている。ユーザーに数日間の備蓄を提唱しているもので、その助成策などが議論となる。また、石油製品は備蓄により品質が劣化するため、その防止剤の開発に取り組んでおり、混入方法、品質管理などの方策も検討している。
 備蓄の放出については、石油供給不足の危機や、そのおそれがある事態に際して過去に5回行なったが、いずれも民間備蓄義務日数の引き下げで対応しており、国備の放出は行なわれていないのが実態である。東日本大震災でも、民間備蓄を段階的に25日分引き下げた。その他、IEAでの協調行動で放出している。国備は原油で保有されており、原油を処理して製品にするまで期間がかかるため実際に備蓄を放出するケースはなかった。また、価格高騰時に放出を求める意見も出ているが、高値の判断基準がなく、国が放出することを決めると、逆に危機感を煽り、さらに高騰するケースも想定されるため難しい。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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