2014.06.09 のニュース
さらに踏み込んだ不当廉売調査を
前号で報じたとおり、石油の不当廉売での「注意」件数が13年度は452件だった。10年1月に施行された改正独禁法への期待から09年度の「注意」は956件に急増したが、10年度は700件台、11年度以降は400件台が続いている。
石油販売業界は独禁法で禁止している不当廉売などの不公正取引に対し、何度「注意」が出てもまったく効果がなく、一般に公表される「警告」は「逆に当該業者の安売りを宣伝しているようなもの」として、これらの不公正取引に対し排除措置命令や課徴金を課すなどの罰則強化を求めた。それが採り入れられたのが改正独禁法で、業界の期待は高まり、公取委への申告件数も跳ね上がった。しかし、申告を繰り返しても結果はほとんどが「注意」どまりで、法改正後、「警告」が出されたのは13年1月のミタニだけ。排除措置命令や課徴金の事例は一件もない。
そうはいっても、市場では系列玉と業転玉の格差が拡大し、量販業者が一般特約店の仕切り以下の価格で小売販売するような歪な状況が続いている。この不透明な状態をなんとかできないかという思いで改正独禁法に期待を繋いでいる事業者もいるのである。それが452件の「注意」になっている。
昨年7月、公取委は9年ぶりにガソリンの取引に関する実態調査を行い、報告書で元売に対し改善の指摘を行った。その際に、系列玉と業転玉の実態や仕切価格の設定方法など詳細な調査をした。また、この4月からは、石油流通問題議員連盟の提言に基づいて、石油流通証明書の仕組みもスタートした。不当廉売の疑いのあるガソリンが、どこの製油所から出荷され、どのようなルートで届けられ、販売されているのか。ルートが辿れるわけだから、公取委はその価格差が生じるメカニズムを解明することも可能なはずだ。
石油流通議連の野田毅会長は今年4月の議連役員会で、エネ庁に対し「廉売業者がどういうビジネスモデルでやっていて、どうして安くできるかということを調査してほしい」とも要請している。
石油流通市場の実態に関する行政の認識が深まり、不公正取引の実態解明のツールもそろい始めている。公取委は、こうした取り組みをバックに不当廉売申告に対処していけば、「注意」にとどまることなく踏み込んだ結果が出せるのではないか。