2014.06.17 のニュース
産業競争力強化法の事業再編-高度化法による設備処理と混同-
産業競争力強化法による石油業界の事業再編推進のための調査をすることになったが、これと現在審議中の高度化法での告示改正とが絡めて伝えられている。木村石油連盟会長は12日の全石連の総会で「高度化法が議論されているこの機に、競争力強化法で国が強制的に事業再編を行うような報道もあるが誤認であると思う。高度化法の告示改正に際しても各社に丁寧に説明、納得を得て実施すべきであると主張している」と述べた。
茂木経産大臣が競争力強化法での調査を実施すると発言しており、この調査が約1ヵ月かかることから、この調査結果をみるために、高度化法の告示改正も1ヵ月遅れて決めることになった。だが結果的には、3年後に処理能力を削減する方針を決めるもので時間的な余裕もある。来年度予算、新政策の議論と平行しているが、夏頃にはとりまとめとなる。
産業競争力強化法は、今年1月から施行となり、政府の成長戦略の目玉策となっている。政策、税制支援によって事業再編を促し、国際競争力のある企業を育成することを狙っている。日本の場合は、国内での競争が激しく、海外に打って出る前に体力を消耗するケースが多く、事業再編、集約によって競争力を強化させることが目的となっている。高校野球のように地方予選で勝ち抜くために連戦して体力を消耗、全国大会(甲子園)に出場する時には、本来の力を発揮できないこともあるため、日本の産業も国内での競争で無駄な体力を使うことなく、事業再編によって、世界で競争ができる産業を育成することが目標となり、経産省としても目玉策となっている。
この競争力強化法の対象として石油業界が選ばれたことになるが、石油業界の首脳と経産省との意見交換が行なわれたとの噂もある。強化法の50条では「政府は、事業者による事業再編の実施の円滑化のために必要があると認めるときは、商品若しくは役務の需給の動向又は各事業分野が過剰供給構造にあるか否か、その他の市場構造の関する調査を行ない、その結果を公表する」となっている。“調査を行ない公表する”ことにとどめおり、強制力はない。「再編計画の提出を求める」とあるが、これも自主的なものとなっている。
一方、高度化法は設備処理に特化しているが強制力がある。第1次での適用は3月末で終了しており、約100万バーレル/日の設備が減少した。現在、395万バーレル/日となったが、足元の実需要に対しての生産は330万バーレル/日程度であるため65万バーレル/日が多いとの見方もある。だが、災害時や事故対応のため、ある程度の余力も必要となる。今後、需要が減少するため供給増が指摘されており、告示改正で実質の削減幅が提示されることになる。その算出の根拠となる定義づけで、各社の意見に違いもあるが、設備処理は実施となる。第1次の高度化法による設備処理では停止中の設備もカウントしていたが、第2次高度化法では稼働中の設備をベースにしてスタートとなる。
高度化法の設備処理と競争力強化法の事業再編とは別の対応となる。だが、設備処理を行なえば、再編成が伴うことも予想されるため、どちらが玉子か鶏かの議論ともなるが、自由化の状況下で、国の介入がどこまで及ぶのかとの問題となる。