日刊ニュース

2014.06.19 のニュース

さらなる高値の兆しに備える

 シェール革命で北米での原油生産量は増え続けている。経済制裁に伴いイラン原油は、本来の供給力を大幅に低下させることを余儀なくされている。この2つは原油需給を巡る増産余力として想定できる。
 ところが、中東産と米WTIが110㌦、欧ブレントは115㌦という原油高となった。本格的な有事という報は届いていないが、原油の安定供給をめぐる中東の複雑な地政学的リスクが着火すれば、いま以上の高価格は免れないという見方が一般的だ。過去、多くの乱高下の経験がある石油人は、08年7月の150㌦原油の再来もあり得る、という備えで、最近のイラク情勢を見守っている。
 戦争終結からしばらくは日量150万を割り込んでいたイラクの原油生産量は2012年(bp統計)では313万となり、中東ではサウジアラビア、イラン、UAEに次ぐ4位の生産量を回復した。日本におけるイラク原油は5・8万、全体の1・6%にしか過ぎず、世界シェアも3・7%だが、世界中でイラクよりも原油生産が多い国は7つしかないという事実、相容れる余地が少ないシーア派とスンニ派というイスラム2大勢力の争いであること、騒乱が大油田ひしめく北部で起こっていることなど、安定供給の面からも決して軽視はできない。
 昨今の国内石油事情において、SSが最も警戒すべきは、その高値である。円安ドル高に急転換したことで、この1年は円建ての原油=石油価格の超高値が続いていた。日本の過去最高の貿易赤字の主要因は、この原油高と円安であり、一段と原油高となれば、日本のエネルギーコストは国際的に比較劣位となり、家庭的には消費節約が強まる。つまり、一段と脱石油が加速する可能性があるのだ。4月のダブル増税で、その高値感が一層強まってしまったガソリンのこの2ヵ月の荷動きを見れば、ここからさらなる高値が生じた場合の消費節約は、その可能性が高いというよりも、実際に起こる確信だ。
 08年夏の150㌦原油によって、多くの灯油暖房が、重油ボイラーが競合エネルギーに奪われ、家庭エネルギーはオール電化に席巻された。石油の内需減退を加速させる影響こそが怖い。原油高に対するSSの備えは、お客様に対するきめ細かい情報提供に尽きる。内需減に対するSSの備えは、単位粗利の適正化に尽きる。

提供元:全国石油商業組合連合会
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