2014.06.23 のニュース
原油コスト連動で仕切値上げ ユーザーの理解を得ることが容易に
新体系へ移行後の初のガソリン仕切価格改定は、JX、出光が19日から1円/リットルの値上げとなった。原油コスト連動方式によるもので、イラクの部族衝突による原油価格の値上がりを反映したものである。原油はドバイで3ドル/リットル程度の値上がり、東商取の原油先物は69円/リットル、ガソリンは86円となり、1~2円の値上がりとなってきた。
このように原油価格の値上りがハッキリしているため、ユーザーへの説明がつくことから転嫁し易くなり、販売業者サイドでは、原油価格連動方式を歓迎する向きもある。
しかし、今回のユーザー転嫁となると、1円という小幅な仕切価格の値上げであるのと、17日から改定のEMGが据え置きとなっていることもあり、当分の間は様子をみることになりそうである。ユーザー転嫁の目安は2~3円となっている。
以前の市況(業転)連動の場合は不透明な部分もあり、常に市況の変動をウォッチすることが必要となる。だが、業転市況はあくまでも石油業界内部の取引であるため、その実態を把握することは不可能である。ユーザーに「業転市況が値上がりしたため仕切価格が値上がりとなり、その結果、販売価格を値上げることになる」と説明しても、取引実態が不確実であるため説得力が弱く、理解を得ることは難しい。業転とは何かと説明することすら容易ではない。
また、原油価格が値上がりしても、市況(業転)が直ちに値上がりせず遅れて反応する。原油価格が業転市況に反映されるまでにタイムラグが生じている。業転は国内市況であるため、原油価格が値上がりしても、国内の需給が緩和して供給増になった場合や、価格競争が激化すると逆に値下がりするケースもある。
それに比べ、原油コスト連動は原油価格の動向が常に新聞、TVなどで伝えられているため、原油価格が値上がりしたとなれば、ユーザーの理解を得ることは容易である。
しかし、実際のユーザー転嫁となると、周辺の市況、業転の動向、需給状況など多くの要因が絡むため簡単ではない。値上げを打ち出しても、ガソリンは市況商品であるため、周辺の市況を無視して値上げすることはできず、難航するのが実態である。値上げを達成するには、需給をタイトにして業転を値上げ、さらに販売業者間の足並みが揃うことがポイントとなる。
昨年度は、ガソリン在庫が低位で推移して、需給がタイトであっても業転が値上がらず、逆に値下がるという状況が続いた。在庫が減少すると業転は値上がりするという、従来からの思惑は外れることになった。その結果、元売の3月期決算は赤字となったため、原油価格連動方式に変更、最低でも原油代分は回収することを狙うことになった。
このように「減産→在庫減少→業転市況の値上がり」というシナリオは通用しなくなってきた。その要因は、予想以上の減販となったことと、設備が過剰状況にあり、減産しても供給余力があるとの見通しから、ガソリン在庫が180万キロリットルを割る異常な低位でも需給はタイトであるとの認識が浸透しなかったことにある。ようやく設備処理が3月末で完了したため、需給は実質的にタイトで推移することになりそうである。