2014.06.27 のニュース
産油国・アジア共同備蓄を推進-需要減少で余剰備蓄を活用ヘ-
総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会(第7回)石油・天然ガス小委(第6回)合同会合は23日に開催され、緊急時の供給体制(備蓄対策)を審議、国内需要が減少する状況下での備蓄総量のあり方、日本の備蓄水準はIEA基準を上回っており、余力を活用した産油国共同備蓄の増強、アジア共同備蓄の推進に取り組む方向を打ち出した。
我が国の備蓄は、国家備蓄(2月末)では原油で4911万キロリットル、製品で130万キロリットルを保有しており、IEAの4月末基準で91日分、国内の備蓄法では109日分となる。民間備蓄では原油で1871万キロリットル、製品1815万キロリットルを保有しており、IEA基準では71日分、備蓄法では82日分となり、合計ではIEA基準で162日分、備蓄法では191日分を保有している。このように国備と民備の2本立てとなっているが、国備の一部は民間の石油タンク(製油所)にも蔵置している。
その他に第3の備蓄として「産油国共同備蓄」があり、原油を93万キロリットル=17日分を保有しているが、一部は民間備蓄と重複している。この産油国共同備蓄は、UAEのADONOC、サウジのアラムコ(共に国営石油会社)に原油タンクを貸与し、国営会社が所有する原油を共同で備蓄しているもので、JXの喜入にADONOCが、沖縄石油基地にアラムコが備蓄を保有して事業を行なっている。平時は国営会社のアジア向け供給・備蓄拠点として、タンク内の原油を商業的に活用している。一方、危機時には我が国の石油会社が優先的に購入できることになっており、備蓄法に定める国家備蓄、民間備蓄に準ずる「第3の備蓄」として位置付けられ、緊急時の石油供給体制に組み込まれている。
我が国の備審制度をみると、まず行政指導ベースでの民間備蓄の増強で始まり、1975年に備蓄法により民間備蓄を義務付け(90日)、同時に国家備蓄を増強し1997年に5000万キロリットルを達成した。増強が進んだ後の1993年に民間備蓄を70日分に引き下げて今日に至っている。しかし、国内の石油需要の減少が目立ち、需要見通しでも5年後の18年度までに8.5%減となるなど1日の基準備蓄量が減少する。その結果、国家備蓄約5000万キロリットルをそのまま維持すると、備蓄日数でカウントすると100日分(現在は91日分)に増加する。このように国内の需要減少に対応して、将来に向けての備蓄の総量をどう考えるかがポイントとなってくる。
IEAが求める義務は90日分であり、IEA加盟国の平均が140日分であるため、現在、我が国の備蓄総量162日分はこれを大幅に上回っている。今後も備蓄体制を維持するが、「国家備蓄」と「産油国共同備蓄」(貸与タンク容量の2分の1相当量)を合計してIEAの義務日数(90日分)程度の備蓄を確保することで、産油国との関係強化による共同備蓄の増量、アジア・ワイドでの供給セキュリティ強化の観点からの備蓄、緊急時供給体制の強化に努めることになる。
ちなみに過去において備蓄放出は5回あったが、国家備蓄(原油)、産油国共同備蓄を緊急放出した例はない。東日本大震災でも備蓄の放出は民間備蓄義務日数の引き下げで対応している。