2014.07.14 のニュース
外に発信し続ける気構え
横浜にある日本新聞博物館で、新聞広告の果たす役割について考える展示会「今の時代の新聞広告」が開催されている。この展示会に数多の大企業の広告と並んで、東日本大震災直後に掲載された石油連盟、全石連連名の意見広告が展示されている。全石連では店頭掲示用ポスターとして本紙に差し込み、全国の読者にお届けしたので、ご記憶の方も多いと思う。「不要不急の給油はお控えください」という直接的なメッセージとともに掲げられた「『急がない』『控えめに』という震災支援もあります」という柔らかな表現のキャッチコピーが話題となった、あの広告である。
震災直後、SSの前には長蛇の列ができ、交通渋滞まで起きた。そして、自らも被災しながら、地域のためにと頑張って営業を続けていたSS店頭で多くのスタッフが、長く待たされたからと、あるいは品切れで給油できなかったからと、ドライバーから暴言や、時には暴力まで振るわれるという理不尽さを味わった。そのことこそ、「不要不急の給油はお控えください」とのメッセージを発するに至った理由といっていい。
なぜそんなことが起きたのかは明確だ。それだけ灯油が、あるいはガソリンが貴重なものだったからだ。“血の一滴”といわれた所以であり、その“血の一滴”を供給するインフラとしてSSが社会にとって必要不可欠の存在であると、あの時、少なくとも関東から東北にかけての一般消費者は心に刻み付けたはずだ。
しかし、その後の経緯は多くの方が目の当たりにされたとおりである。安値表示は再び巷に溢れ、安値を礼賛するマスコミの論調も相変わらずだ。災害時協定を結び地元SSに燃料の優先供給を求める自治体も、平時には入札で最安値を提示する全国ネットの量販店と契約し、地元SSの経営には無頓着のままだ。
SSは、いざというときにだけ都合よく登場するスーパーヒーローではない。常に、サプライチェーンの一角を担う重要なインフラとして存在し、同時に、そこで働く人たちの日常を支える生活の場として存在する。そのことを、一般消費者はもちろんのこと、マスコミにも、地方の自治体にも、平時のいまだからこそ明確に認識していただく必要がある。そしてそのためには、業界の情報を常に外に向けて発信し続ける必要がある。