2014.07.15 のニュース
エネ研原油予測 イラク情勢が最大のリスク 下落要因はリビアの回復、新興国の減速
日本エネルギー経済研究所は、原油価格の見通しを発表した。下半期(7~12月)ではブレントが110ドル/バーレル(上半期は108ドル)、ドバイが108ドル(105ドル)、WTIが105ドル(100ドル)と、足元の水準を見込んでいる。2015年通期ではブレントが105ドル、ドバイが103ドル、WTIが100ドルと見通している。足元では6月末には原油相場は上昇したが、ここにきて下落しており、ブレントは109ドル、ドバイは106ドル、WTIは103ドルとなっているが、油種間の価格差は縮小している。
今後の世界の石油情勢のポイントとなるのは、①需給バランスについては、年後半にかけてタイト化の方向にあるが、新興国における石油需要の減速度合いや、OPECの増産動向が注目される、②最大のリスク要因はイラク情勢であり、事態の進展次第では、中東全域に政情不安が拡大する可能性がある、③米国からの石油輸出が増加が見込まれ、シェールガス由来のLPGに加えてコンデンセートのアジア市場への流入の可能性が高まる、とみている。
原油価格が上昇する要因としては、イラク情勢の更なる悪化と、地政学的リスクの高まりによる先物市場への資金流入などがあげられる。一方、下落要因は、①リビア原油の輸出再開と生産量の回復、②中国などの新興国経済の減速、③北米における原油の増産、④サウジなどのOPECの増産、などが指摘される。
原油価格は100ドル台の高値が続き、安定して推移している。先物の指標となるブレントとWTIとの価格差も、以前は20ドル以上もあり、WTIの安値が目立ったが、最近は縮小してきた。米国の経済が回復したこともあるが、WTIの集積基地であるオクラホマ州クッシングからパイプライン網が整備されたことから流動性が高まり、国際価格に連動することになった。今までは米国の国内市場が対象となり海外市況とは乖離したものとなっていた。
需給面でみると世界の石油の需要は、下半期では上半期に比べると200万バーレル/日の増加が見込まれるが、非OPECが80万バーレル/日の増産にとどまると、仮にOPECが現状の生産を維持すると年後半は需給はタイトになる。一方、OPECの1~5月の原油生産は、前年比で60万バーレル/日の減産となっている。これはリビアの減産によるものである。OPEC全体ではサウジ、イラクの増産でカバーしているが、リビアの減産分を賄うまでに至っていない。イランの輸出は増加しているが、短期間での増産は難しく下半期はリビアの輸出増加とサウジの増産の有無との変易注目されるとしている。
原油価格の動向については、国内では6月から原油コスト連動方式での新体系が実施となり、販売業者も関心をよせている。以前(2008年9月まで)は月決め制の原油コスト連動方式を導入していたため経験済みであるが、新体系は元売の黒字転換の方策であるため、どのように価格改定してくるのか、販売業者は元売の出方をみている。
石油情報センターの調査価格(7日)では、ガソリン市況は11週連続値上げで169円70銭/リットルとなり、170円相場となってきたため、高値が問題となり、ユーザー説得も重要となってきた。