日刊ニュース

2014.08.07 のニュース

総合エネルギー企業化を目指すが-事業再編、設備処理が当面の課題-

 総合エネ調の石油・天然ガス小委の中間報告によると、石油精製業の方向性については①内需は今後も減少が続くため設備は過剰となり、引き続き設備処理(40万バーレル/日)を行なう、②その実現に向けて事業再編を進める、③具体的には製油所の統合運営(地理・資本の壁を越え)などを行ない、国際競争力を高める、④最終的には海外展開、国内では電気・ガス事業に取り組む「総合エネルギー企業化」を目指すとのシナリオが提示されている。
 「総合エネルギー企業化」とは、国内石油事業だけでは成長戦略を描くことが困難であるため、上流(石油などの資源開発)事業やアジア諸国での中下流(石油精製・販売・石油化学)事業、自由化が進む国内の電力ガス事業を充実させて、成長していく戦略を求めているものである。
 すでに石油連盟では、昨年11月に新しいエネルギー政策への提言として同様に「総合エネルギー企業化」を目指す構想を発表している。国際競争力を強化し、エネルギー産業を「成長産業」に発展させることが重要としている。その取組みは、資源開発、海外展開、石油化学、構造改善(製油所・コンビナート)、電カ・ガス事業、再生可能エネルギーなどをあげている。中間報告は石連の提言をそのまま登用したことになる。
 今回の中間報告については。審議中にも反対意見が出て対立する局面はなく、各業界委員の意見を組み入れており、幅広い問題点が網羅されているのが特長である。その意味では自民党のエネルギー政策が反映されたものとなっている。
 石油各社も、すでに「総合エネルギー企業化」を目指して取り組んでいる。石油化学、石油開発、電力などの得意な分野で、事業の多角化に先行して取り組んでいる。さらに新たな目標を定めて、加速させるかは今後の各企業の判断となる。巨額な投資が伴うため利益回収と自己責任の範囲で実施となるが、利益が確保される保証がなく、当然、リスクが伴うため判断が難しい。過去の例からみても、多角化による新規事業展開での成功例が少ないこともあり、一方では慎重さが求められている。
 政府は、まず、エネルギー高度化法(設備処理)と競争力強化法(事業再編)の2法を活用することで、政策手段を講じて後押しすることになる。高度化法では新しい判断基準が施行されており、3年後には40万バーレル/日のトッパー能力を削減、設備処理の方針が決まっている。
 高度化法による設備処理の目的達成の手段として事業再編を促しているが「事業再編等は、あくまでも個々の企業が自らの判断で実施するのもである」と断っているものの、その反面「厳しい経営環境の中で、スピード感を持った経営判断を行ない、自社の個性を活かした成長戦略を模索し、飛躍を果たしていくチャンスが訪れる」として、政府としては「数年の間に集中的に政策手段を講じて環境整備を行なう」と促している。
 当面は来年度予算要求にどこまで反映されるかが焦点となる。予算要求、新政策を受けて、各社が設備処理、事業再編についての取組み策を10月末までに提示することになっている。事業再編では相手のある計画となるため簡単には調整は難しいが、競争力強化の方向で新しい枠組みができるのか注目される。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
〒112-0004 東京都文京区後楽2丁目22-3
TEL:03-3814-4728
FAX:03-3814-4745
ユーザーID:
パスワード:
ログインする
e-BISTRADE