2014.09.04 のニュース
目玉は事業再編と強靭化対策 予算確保で再編促すが慎重な対応も
平成27年度の概算要求がまとまり、石油・天然ガス関連予算は2974億円で前年に比べて226億円の増額となった。4月に決定したエネルギー基本計画と、総合エネ調の石油・天然ガス小委の中間報告の提言を実現させるための予算となっており、これがほぼ網羅されている。これから年末の政府案の決定まで折衝が行なわれるが、大きく削減されることはないとみられる。
石油精製関連では、新規の目玉策として「石油コンビナート事業再編」と「製油所、油槽所などの強靭化事業」の2事業を合わせて220億円の要求となっている。要求段階では総枠としており、細目は今後詰めることになっているが、スピード感を持った対応を要請している。
事業再編については、エネルギー高度化法による第2次設備処理(3年後には40万バーレル/日の削減)が実施になるのと、産業競争力強化法の施行に伴う事業再編を促すための予算措置を講じているものである。設備処理と事業再編とを一体で取り組むことになる。同時に強靭化対策にも関連するため内数扱いとなった。
国内の製品需要は今後も減少するため、精製能力は過剰状態が続く。そのため引き続き設備処理を実施して、高稼働で効率的な操業を追求することになる。設備処理を実施して競争力をつけるには、いつまでも業界内部での過当競争を続けて体力を失うのではなく、①複数の製油所の事業再編・統合運営などによる設備の最適化、②製油所単位でのノーブルユース(高付加価値な有効利用)や高稼働の実現を目指す「次世代型製油所モデル構築」に向けた投資を支援(補助金)するものである。
グループ内での製油所間、石油化学工場とのパイプラインによる連携強化のための投資は、コンビナートルネッサンスとしてすでに実施されてきた。26年度からは、拡大して資本・地理の壁を超えた連携に対して予算措置を講じることになり、そのモデルとして、コスモ・千葉と極東石油との合同会社を設立して共同運営の計画が具体化している。26年度予算で新規「石油産業構造改善事業」として35億円を確保している。
27年度予算要求では、新たに産業競争力強化法が施行されたのを機に、事業再編をさらに拡大するため新規事業として打ち出したものである。新規となっているが、26年度の予算要求と同じ対応策となっている。
各社とも事業再編について検討しているが、具体的な計画が提示されるのは先となる。予算(補助金)が確保されていても、その事業が利益を確保できる投資計画であるかは別問題であり、リスクが伴うケースも多く慎重な対応となっている。
製油所、油糟所の強靭化対策は、首都直下型地震に備えて安全対策、入出荷設備の増強対策を支援するものである。東日本大震災時でも、石油製品は製油所、油槽所で保有していたが、出荷設備が被害を受けたため出荷が不可能な状況となった。このことから、施設の強靭化を図るための支援策を講じることとなった。26年度の補正予算で125億円が確保されており、引き続き27年度では本予算で要求したものである。
需要が減少しており、油糟所、設備が減少する状況下で強靭化を進めるか、設備を廃棄するか難しい選択が求められる問題となる。