2014.09.30 のニュース
冷静な判断と旺盛な関心を
トヨタ、ホンダなど国内主要自動車メーカーが燃料電池車(FCV)の市販に具体的な道筋を示したことで、次世代自動車という言葉がぐっと現実味のあるものに感じられるようになった。その次世代自動車について「ぜんせきweb」のアンケートで、10年後に主流となる次世代自動車はなにか聞いたところ、72%がハイブリッド車(HV)と答えた。FCVは15%にとどまった。HVはガソリンエンジンを搭載しているから、10年後も次世代自動車の主流はガソリンエンジン併用ということになる。
いまから10年後といえば、東京オリンピックの4年後にあたる。国を挙げて「水素社会」をアピールし、6年かけてオリンピック関連車両へのFCV導入を推進するであろう、さらにその4年後の話である。FCVが主流とついつい答えたくなってしまうところだが、FCVが来年以降毎年10万台売れたとしても、10年後に乗用車全体に占める割合は2%に満たない。しかもその10万台はHV並みの販売を想定してのことだから、とても現実的とはいえない。
そう考えれば、オリンピックというビッグイベントを経た後でも、ガソリンや軽油が車を動かす燃料の主流であることに変わりはないという見方は理に適っている。新しい技術の華やかさやマスコミの派手な報道に惑わされることなく、SS業界としてはそういう冷静な判断を、いますべきなのだろう。
一方で、FCVの普及に対応するための水素供給インフラのSS併設については、「設置してみたい」との声が81%に達した反面、そのうちの3分の2が「実際の設置は困難」と答えている。理由は過半数が「コストがかかりすぎるから」。経営が逼迫するSS業界にとって、これが越えられぬ壁となっている。もっとも供給インフラの高コストについては、もともと水素問題の最大の課題とされてきた。改善に向けた議論・研究も日々進められている。SS業界が声を上げていくことで、越えられる壁となる可能性は低くない。
SS業界としては、オリンピックへ向けたFCV普及キャンペーンの華々しさに動揺する必要はないだろう。しかしその一方で、将来の車社会を席巻しそうなFCVという新しい流れには、常に関心を持ち続けたい。冷静な判断と旺盛な関心。この2つを持ち続けることが、SSの次世代へ向けた道標となるはずだ。