2014.10.21 のニュース
電源を下支えする石油火力
太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの普及拡大に向けた支援策が見直しを迫られている。他の再エネに比べ設置・導入ハードルが低い太陽光が個人宅をはじめ、企業の遊休地などで導入が進み、電力会社側の受け入れ体制が追い付かなかったことに加え、買取費用の増大が電力料金のアップを招き、中小企業が大勢を占める石油販売業界の経営にも大きな影響を及ぼしている。
また導入当初から買取価格が割高に設定されたことや、東日本大震災による原子力発電所事故をきっかけに、それまで電源の約3割を占めていた原発が次々に稼働停止に追い込まれ、代替電源として温室効果ガスの抑制につながる再エネへの期待が高まったことも追い風となった。
しかし、急激な導入拡大は次第に制度のほころびを露呈させる結果となった。太陽光を上回る発電効率が期待された風力や地熱などの導入は、建設から発電開始までの準備期間の長さがネックとなり思うように設置が進まないほか、昼と夜、天候によって発電量が大きく変動する太陽光が再エネ導入量全体の9割以上を占めたために、各地の電力会社で送電線の受入容量が足りなくなる地域が出てくるなど、今月から一般家庭を除く新規事業者からの買取契約を中断する電力会社も出てきた。
ここで忘れてならないのは、原発が停止している中で、電源を支えているのは化石燃料による火力発電という現実だ。震災後の12年度電源構成では火力が9割弱まで達した。うち石油は10年度に7・5%だったが、12年度は18・3%と2・4倍に拡大し切迫する電力供給を支えた。
4月に閣議決定したエネルギー基本計画は、石油火力について「電源としての利用量はそれほど多くはないものの、ピーク電源及び調整電源として一定の機能を担っている」と指摘。「可搬性が高く、全国供給網も整い、備蓄も豊富なことから、他の喪失電源を代替するなどの役割を果たすことができ、今後とも活用していく重要なエネルギー源である」と位置付けた。需要減に任せて火力発電所の廃棄だけが進んでいってしまえば、緊急時の電力供給の“最後の砦”としての役割は果たせなくなる。再エネの導入拡大が大きな曲がり角を迎えたいまこそ、今後検討が本格化するエネルギーミックスの中で石油の確固たる位置付けが確保されなければならない。