2014.12.18 のニュース
危機的な元売収益の戦犯
後世からOPECショック、あるいは逆オイルショックと命名されるかも知れない原油の下落が続いている。11月27日のOPEC総会での原油生産枠据え置きを契機に、相場が暴落の様相を呈している。ドル建てでは5年5ヵ月ぶり、円建てでも2年5ヵ月ぶりの値下がりという近況で、ここが底値なのか、まだもう一段の大底があるのか、その答えは市場を司る神のみぞ知る。
アベノミクスの反作用の円安による原油高にダブル増税が重なり、ピーク時には小売全国平均が170円寸前という5年半ぶりの高値に跳ね上がっていたガソリンは消費節約が顕在化した。満タン給油で1万円に迫る現実、18㍑店頭灯油のシーズン・イン価格が2千円を超える想定を当時のSS経営者の多くが描いていた。景況感を左右する数量を失い、その高値が持続して、ますます内需が先細りするイメージを描いていた。今回の原油暴落は、そんなSSにとっては朗報である。年末商戦を控え、険しかったお客様の顔が幾分、和らいだように見えるが、一旦きつく締まった財布のひもは、まだまだ緩みそうもない。質にのみ、SSの活路があるという方向性は堅持したい。
一方の元売収益は、原油下落に伴い悲惨な症状を呈している。需給がだぶついて安定供給懸念が薄い昨今だが、原油途絶リスクに備え、わが国には常時8千万㌔㍑を超える石油備蓄がある。このうち民間備蓄義務として、元売には内需の70日分に相当する備蓄義務=在庫の確保が課せられている。約1億8千万㌔㍑の年間内需に相当する元売の備蓄義務量は約3500万㌔㍑だが、元売の実際のそれは80日分の約4千万㌔㍑となる。
原油相場の近況は前年末の12月末比で㍑27円強、前年度末の3月比でも23円強、各下落している。12月末比での在庫評価損は国内石油業界の合計で1兆1千億円を超える。3月末比でも9千億円台の半ばに迫る。この巨額な損失は、原油相場の大幅下落という元売の経営努力の埒外のことではあるが、これを少しでも軽減させる経営努力は必要であろう。その努力の矛先は、本業=国内石油販売という領域に尽きる。その一翼に連なるSS子会社の中で、昨年12月末時点よりも数量を増やし、採算性を損なった会社こそが、全SSの採算性を悪化させ、ひいては元売の正味業績の良化を阻んだ元凶である。