日刊ニュース

2015.01.20 のニュース

原油価格は底値との見方も シェールオイルの生産コストは限界に

 原油価格は1月に入って一段を下落して40ドル/バーレル台で推移している。ここにきて、シェールオイルの生産コストも限界点にあり底値との見方もある。元売サイドは、在庫評価格損の発生で赤字となるため値上がりを期待しているが打つ手がなく、我慢して推移を見守ることになる。
 原油価格の見通しは難しいが、出光興産は15日に開催した「アポロエナジーミーティング15」で、15年の原油価格をWTIが46~66ドル、ブレントが53~73ドル、ドバイが50~70ドルと見通している。予測は難しいとして20ドルの幅をもたしている。
 石油の需給面からは①世界の需要はIEAなどでも下方修正となっている、②OPECの生産調整の可能性が後退している、などの点をあげている。ただし、低価格によりシェールオイル、オイルサンド、深海油田の高コスト原油が減産に追い込まれることになれば需給はタイトになる。
 一部ではシェールオイルの生産を停止したとの動きもあり、コスト割れとなっているが、投資した資金を回収するためには、採算割れでも生産を続けているため、OPEC産油国との我慢比べとなっている。
 急落のきっかけは、OPECが昨年11月27日の総会で3000万バーレル/日の生産枠を維持することを決めて、減産を見送ったためである。従来の下落時はサウジが減産して需給調整の役割を果たしていたが、今回はスイングプロデュサー役を放棄したため、大きく影響した。サウジ自身も需要が減少している状況下で減産しても、他の産油国(イラクは増産)が追随するか不透明であるのと、当面、増産しているシェールオイルの減産を狙って、原油の減産を見送ることで対抗したとの見方が強い。
 40ドル台となれば、シェールオイルの生産コストも限界となる。さらに新規の石油の探鉱、開発は停止に追い込まれるのと、オイルサンド、深海の原油生産は難しくなるため需給はタイトになる。しかし、足元も非OPECの米国、カナダではシェールオイルの増産で生産量が増えているため、需給がタイトになるには時間がかかる。そのため値上がりは、今年の後半以降となり、緩やかに値上がりするとの見通しもある。
 ただし、シェールオイルの開発は、生産を開始しても自噴することはなく、生産期間は短くて1~2年であるため、常に新鉱区での開発を続けることになるため厳しいところもある。開発を停止すれば、一気に減産となるが、埋蔵量の把握も難しいとの見方もある。原油開発の場合は、生産を開始すれば、寿命が長く20~30年も生産が続く油田も多い。
 一方、世界の石油需要は減少している。中国、インドは増加しているが、欧州、日本で減少しており、トータルではマイナスとなっている。そのため需給バランスは約100万バーレル/日が供給過剰とみられている。特に米国はシェーオイルの増産で輸出国に転じている。原油の輸出は原則禁止しているが、石油製品(コンデンセート)の輸出を行なっており、日本にも輸出されている。このように世界の需給環境が予想外で変化している。
 また、地政学リスクも緩和している。供給増を背景にしているが、イラクでのイスラム国の拡大、イランの核問題、シリア、リビアの内紛などの拡大が予想され、いつ再発、拡大するか警戒を要する。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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