2015.03.09 のニュース
車の両輪揺らげば進まず
石油業界が激動期にあることを示すものの1つに、元売の人事異動がある。直近発表されたJX、出光の4月1日付、役員人事は久しぶりに衝撃的な異動がないものだったが、今年も各社とも大きな役員異動が相次いで公表されている。
昭和シェルが2月10日に香藤繁常代表取締役会長の退任と亀岡剛執行役員石油事業COOの新社長就任を明らかにした。経営トップであるCEOの交代であり、香藤会長は顧問に退く。同じく20日に発表された東燃ゼネラルの役員人事では、今澤豊文常務取締役が退任することが明らかになった。グループ会社のEMG副社長は留任するが、燃料油販売事業の責任者は後任に譲るとされる。昭和シェルCEO交代と同日の10日には、元売ではないが、2千ヵ所超の系列SS網を持つ伊藤忠エネクスも、カーライフ事業本部長である堤浩二取締役常務執行役員が取締役を離れることが内定したと公表した。
こうした大きな人事異動は昨年から続き、業界全体に及んでいる。昨年を振り返ると、当時の役職で、2月に昭和シェルの新井純代表取締役COO、村田浩幸執行役員販売部長の退任が発表されたのが皮切りだ。その後、出光興産の松井弘志常務執行役員が退任、JXエネにおいては一色誠一社長と小売販売部門の責任者であった高橋章次取締役常務執行役員が退く。そして、コスモ石油も販売トップの荻原宏取締役常務執行役員が退任した。
今年の株主総会で東燃ゼネの今澤常務取締役が正式に退任すると、2014年初めに主要元売5社においてSS最前線につながる販売部門を指揮していた実務担当の販売トップ役員はすべて姿を消すことになる。わずか約1年の出来事である。人事異動は企業の動向をみるうえで重要なファクターとされ、それが役員人事なら尚更だ。この石油業界の役員人事の激しさをみるだけで、それぞれの企業、そして業界全体がいかに激動期の大海原を進んでいるかを改めて痛感させられる。
元売の販売部門と我々石油販売業界は大きく関係していることはいうまでもない。特に業界の大勢を担う系列SSにとっては、いまや昔の響きがあるのは寂しいが、本来は車の両輪の関係である。元売、販売のどちらかが大きく揺らげばガタガタするだけで、車は一向に前に進まないことになる。