2015.04.06 のニュース
発券店値付けカードの矛盾
発券店値付けカードが、またぞろ世間を騒がせている。しかも対象は神奈川県警。この、いままでにない展開がより注目を集めている。発券店値付けカードは、古くて新しい問題とされる。古いとは、文字どおり30年も前から、密かにこの業界の根太を揺るがせてきた歴史を意味する。新しいとは、神奈川県警の事例のように、俎上に上るたびに新たな局面を突きつけてきた経緯を指す。
発券店値付けカードが抱える根源的な矛盾には、いくつかの大きな核がある。第1は、発券店値付けカードの特性そのものに係る矛盾だ。発券店値付けカードは、発券店に大半の権限が付与され、実際に給油するSSには販売価格を決める権限すらない。カード給油の売り上げは発券店のものとなり、給油店には代行手数料のみ支払われる。売り上げはおろか、カード給油分については仕入れた事実さえ存在しない。
第2の矛盾は、根こそぎ顧客を奪い取っていく仕組みだ。発券店値付けカードはもともと、大企業の社有車や企業組合の加盟会社が所有する車などを対象としてきた。企業や組合がこのカードを採用した瞬間、それまで個別に給油していた車が一網打尽にされ、後にはなにも残らない。
第3の矛盾は、地元にSSを持たない企業はもとより、そもそもSSを業としない企業でさえ発券できる制度だ。地元にSSを持っていれば、発券価格の安さは自社にも影響を及ぼす。しかし地元にSSを持たなければ、その地域の市況を考慮する必要がない。それがSS事業者ですらないとなれば、SS業界がどうなろうとお構いなしとなる。
では、神奈川県警の事例はどうか。発券店が大手商社ということで第3の矛盾には当てはまらないが、一方で新たな矛盾を突きつける。それは、大企業が少ない地方都市ほど、地元SSの被る被害が大きいことだ。大企業が少ないがゆえに狙い撃ちされやすく、店頭客の大きな割合を占める官公需を一網打尽にされやすい。
さらにもうひとつの罪は、大災害発生時に真っ先に優先給油を求めてくる緊急車両が、今回の対象という点だ。もはや矛盾の極みと言わざるを得ない。元売も発券店も、そして需要家としての官公庁自身も、良識を示す最後のチャンスだ。こんなことがまかり通ってしまうようでは、本当に、“最後の砦”としてのSSは成り立たなくなる。