2015.08.25 のニュース
スキャンツールが示す未来
国交省は今年も、整備業界を対象としたスキャンツール購入に対する補助事業を3年連続で実施した。昨年は2次募集まで実施して執行率は7割程度だったが、今年は7月末で締め切られた申請状況によれば5割を切ったという。
整備業界のスキャンツール普及率は、現状では6割程度。にもかかわらず、国の補助事業が利用されない理由はなんなのか。一部に、手続きの煩雑さを指摘する声があるのは事実だ。この補助事業はもともと、スキャンツールを活用した整備の高度化実証が目的のため、スキャンツールによる点検実績の報告まで義務づけられ、現場にとってはこの事務処理に対する負担感が根強い。
しかし実際には、今後同様の補助事業が実施されても、手続きの煩雑さ云々とは関係なく、残る4割が補助金を申請する可能性は低いともいわれる。根拠は、整備業界内に広がる「使いこなせる工場にはすでにスキャンツールが行き渡っている」との感触だ。言い換えると、いま導入していない工場は、スキャンツールを使いこなすことができないと自ら判断してしまっていることになる。
それでは、“使いこなせない”工場はこの先どうするのか。その問いに、ある大手機器メーカーの幹部は「廃業するつもりではないか」と答えている。使いこなせる人材の不在か導入する財源の不足か。理由はなんであれ、スキャンツールという不可欠の機器導入を断念することで、結論は見えてしまったということか。
確かに同業他社やカーディーラーを紹介する道がないわけではないが、車を本業とする整備工場がその車のケアを放棄するということは、行き着く先は自ずと知れている。近い将来、車検においてもスキャンツールが不可欠となることが確実な状況ではなおさらだ。業界関係者の声だけに衝撃的ではあったが、一方では厳しい現実なのかもしれない。
翻ってSS業界はどうか。整備業界より現状の普及率が低いのはやむを得ないとしても、車を相手にする商売という点では整備業界と大差はないはずだ。スキャンツールの本質的な意味を理解できているか否か。理解しようという方向に、積極的に動けているか否か。先週、全石連主催のスキャンツール研修がスタートした。この研修を実施する意味をいま一度思い起こしたい。そしてなにより、毎回の盛況を期待したい。