2010.07.01 のニュース
論説 問われる巨人・JXの市場対応
あすJX日鉱日石エネルギーが発足する。SS総数は全国で1万3千ヵ所。出光やEM、昭和シェルの系列SSの実に3倍の規模となり、和歌山以外の46都道府県でナンバー1シェアを有する。後決めに衣替えした6月からの新・新仕切り体系への統合に続き、あすからは個人、法人向け計6種のカード(会員122万人)が相互乗り入れを開始する。いますぐサインポールは統合しないものの約2千万KLのガソリン販売量を有する巨大なネットワークが生まれる。戦後の石油業界の中でSS数、販売量ともこれほど占有率を持った系列はなく、JXのインパクトは過去の元売合弁事例とは比較にならないほど大きい。
いまからふた昔前、昭和末期までは十数社の元売がひしめき合い、事後調整を前提にした過当競争を演じていた。その後、昭和シェル、コスモが誕生して数こそ減ったが、規制緩和を前に、その多くが自系列ネットワークの拡充という戦略に突き進んだ結果、史上最多の6万ヶ所ものSSがマーケットに出現する。過当競争体質を一層強くした中で、セルフ解禁などが加わり競争はさらに激化、自由化という名の泥沼に製販両業界とも足を取られ続けた。主要都市だけでなく、中山間地域を含む広範囲でSS閉鎖が発生、いくつかの元売も市場から撤退を余儀なくされたのが平成の歩みだった。
唯一の増販油種であったガソリンまでもが需要のピークを迎え、明らかな減退期に入ったいま、過剰な精製設備の解消が喫緊の課題である。JXは合併最大の任務として、需要に見合った生産態勢の実現を掲げ、全国ネットで配置された製油所のうち、5月末の大分(2.4万バレル)と鹿島(2.1万バレル)のトッパー削減に続き、水島の11万バレルもきょう、削減する。さらに、10月末の根岸(7万バレル)の削減と来年3月末の大阪(11.5万バレル)の輸出製油所化を実施すると、グループの精製能力は173万バレルから2割圧縮の139万バレルまで絞り込まれる。今年から来年にかけての製油所合理化によって、稼働率95%を実現するという。
需給バランスこそマーケット正常化の第一歩であり、これに果敢に取り組む姿勢は流通業界を含めた石油産業全体の再生への意欲と受け止めたい。JXの動向はわが国の石油業界の近未来を制するものとなる。JX日鉱日石エネルギーが強欲な市場の巨人になってもらっては困る。