2010.06.24 のニュース
論説 4万SSのバランスシート
この3月末の登録SS数が公表された。08年度に2千ヵ所に迫る純減を記録した感覚が残っているせいか、09年度の純減数1733ヵ所という数字は、減少スピードがやや減速した錯覚にとらわれるが、依然として数的な推移は、ハイ・スビード淘汰という冠がふさわしいようだ。
減少率という観点でとらえると、09年度の減少率は4.12%となる。これは08年度の減少率4.46%と比較するとやや低位に映るが、実はSS淘汰、激減というトレンドが鮮明になった過去5年間では2位、ワースト2の位置付けとなる。昨年4月時点で存在したSSが、全国平均的に24SSにつき1SSが廃止された計算だ。5時間毎に1SSが消え、毎日ほぼ5SSずつ少なくなる勘定が、年1733減少となる。
月平均の純減数が144SSというペースから推計すると、今年度の76日目に4万ヵ所を割る計算が成り立つから、6月15日が4万SS割れの想定Xデーとなる。6万超のピークを付けた94年度から10年後に5万ヵ所を割った。5万ヵ所から4万ヵ所割れの今年度までは7年間を要した。純減数のトレンドで想定すると、15年度には3万ヵ所を割る。減少率を参考にすると3万ヵ所割れはそれから2年後の17年度となる。
1SS当たりという指標に注目すると、SSの減少率が年4.12%となる一方で、ガソリン内需はわずかではあっても0.1%増を記録した。ガソリンの1SS平均月間販売量は、08年度の113.8キロリットルから、09年度は118.9キロリットルに5.1キロリットル増、4.4%増えた計算だ。粗利を落とさないで09年度を乗り越えたSSがあれば、利益に寄与したであろう数字が残る。ただし現実は、その多くが一部量販店と直営に吸引されたと見ざるを得ない数字がある。
94年度末6万超から、09年度末4万357SSに至る15年間の純減数は2万64ヵ所となるが、実はこの間に8313ヵ所の新設が参入している。したがって、15年間の廃止SSは2万8377ヵ所となる。94年度に現存し、09年度も現存するSSは3万2044ヵ所で、生存率は実に53%となり、いかに厳しいSS業況が続いたかを物語る。新設の大部分は元売資本を含めた大企業系。新設の所在地が、いわゆるSS過疎地をカバーするイメージは薄い。中小の生業SSは、さらに厳しい15年間を過ごしたことは間違いない。
ほぼ合理化の余地がなくなった多くのSSが、さらに1円多くの収益を上げる術は、現状よりも売値を高くするか、仕入れ値を安くするかの二手。過去には油外増、数量増など、少なくとも四手あったが、コア・ビジネスの燃料油で収益増を図るのが本筋である。元売がミスリードしたとはいえ、ボーナスである油外を本給に据えたことも、我々が犯した大きな間違いのひとつなのである。
数量を増やす方法が通用した時代は去った。割安な価格を武器にする薄利廉売は中小SSの生きる道ではない。こんな時代に数量を深追いすれば、よほどの資力がない限り、それは長続きはしない。ごく短期間に安値のみを理由に集めた顧客=数量は、資力のあるものが同一手法に舵を切った瞬間に、保持が困難となり消耗戦に入るのだから。地球環境対応、地下で膨らみ続けているリスク対応、設備更新、新ピジネスモデル対応など、近い将来に必要な資金が確保できないのは自明の理だ。
元売の採算のみを確保する手法に、アレルギーは残るが、それでも海外での資源競争で伍していく体質を確保する、製油所の統廃合・高度化リストラ費用を捻出する、さらに世界標準での企業価値最大化にまい進する、という、実は我々SSよりも、はるかに大きな経営問題を踏まえて、収益を確保するという決意を固めた事実は、傾聴に値する。この手法は、需給をバランスさせるということがなければ早晩、画餅に終わるだろうから、実行力も必要だ。
元売が自己中心主義で収益を舵を切ったなら、我々も、残された二手の方法で収益を再構築する道に踏み出そう。2年とされる猶予期間は、瞬時に迫ってくる。