2010.07.06 のニュース
石油業界「新成長」の出発点
政府が閣議決定した新成長戦略のキャッチコピーは、「元気な日本」復活のシナリオ。行き過ぎた市場原理主義に基づいた経済政策を”失敗”と言い切り、リストラの断行が多くの失業者を生み、国民生活が一層厳しくなり、デフレが深刻化していると分析したうえで、過去の失敗に学び、経済社会が抱える課題解決を新たな需要や雇用創出のきっかけとすることで、成長につなげる政策を指向、生活のセーフティネット充実化が経済成長の礎になるとした。
まさに、多くの石油販売業者が実感し、実害を受けてきたことだろう。そして、状況は一層険しくなっているのでは。16年間で2万ヵ所が減少した中でいまもSS運営を続けている組合員は、社会インフラの維持が机上の論理で進むほど生やさしいものではないことをよく知っている。クルマのメンテナンスが安全走行の原点であることもわかっているし、収益には至らずとも幾多のアドバイスが役立ったことを望んでいる。灯油の配達が快適でリーズナブルな居住環境を提供していること、特に地方部の中小SSがコミュニティの場となり地元の一員としてもその輪に加わっていることを見聞している。地域の雇用責任も果たしている。SSには社会的な存在意義がある。
他方、これも閣議決定された2030年に向けたエネルギー基本計画。政策の柱は工ネルギーセキュリティの確保、温暖化対策の強化、効率的な供給で、新たな視点に「経済成長の実現」と「産業構造の改革」を追加した。エネルギーミックスのあり方としては、非化石工ネの最大限導入を目指しつつも、中長期的にエネルギーの相当部分を化石燃料に依存せざるを得ず、石油の内需は減少するものの「利便性と経済性に優れ、すでに全国的に供給インフラも整っている」と評価、引き続き基幹エネルギーと位置付けている。
この国家方針を名実ともに遂行し続けるためには、サプライチェーンの維持が欠かせない。上・中流での対応は精製元売、下流は販売業者の役割だが、下流域における元売の責務は市場地図からも明らかなように、従来に増して重くなっている。業績回復に充てるコスト負担を系列SSに求めた以上、小売市場の収益改善をきちんと牽引してほしい。その際、石油業界の”新成長”のために、過去の失敗を繰り返さないようことを強く望む。