2011.02.16 のニュース
ブレント高、WTI下落で価格差拡大 ―異常な状況長くは続かず―
原油価格が変則的な値動きをしている。WTIが86ドル/バーレルと値下がり、北海のブレントは100ドル超え、中東物も96ドルと値上がりしている。ブレントとWTIとの価格差は15ドルと大幅であり、このような状況になったのは初めてのケースである。
最近でも咋年10、11月はWTIとブレントが同値となっていた。ブレントが高過ぎるのか、WTIは安過ぎるのか、見方が分かれるところであるが、一般的にはWTIが安過ぎるとみられている。
ブレントが高値となっているのは、欧州で早めに寒波が到来し、欧州に近いチュニジアでの政変、これがエジプトに波及し政情不安となったことなどで値上がりしたもの。エジプトはムバラク大統領の独裁政治に対する国民の反発から大規模なデモが起こり、緊迫した情勢が続いていたが、大統領の辞任が伝えられ、治安は回復してきた。しかし、その後の受け皿も不透明であり、正常化には時間がかかりそうである。混乱が続くとスエズ運河を経由する原油輸送に支障が生じるとの見方と、この影響が他の産油国の政治体制に及ぶのではないかとの懸念から原油価格は急騰している。
だが、エジプト原油の生産量は70万バーレル/日で少量であるため世界の原油需給には影響しない。日本の開発企業は、エジプト石油開発(国際石油開発帯石と三井石油開発出資)が生産中であり、アラビア石油は開発中で社員が駐在していたが、今回の混乱でエジプトを無事脱出した。
ブレント、南方原油は100ドルを超えているため、再度、一年7月のようにWTIの145ドルという最高値を想定する見方も出ている。
WTIは、エジプトの治安も安定し、もっぱらアメリカ国内の事情で値下がりしているが、ブレントの方が大幅な高値で推移しており、これは異常な事態といえる。もっとも、これ以上ブレントとの間で価格差が拡大することはなく、今後は両油種がけん制するため価格は収斂、価格差は縮小するものとみられている。
原油価格の見通しは、いつの時期でも難しいが、9日に開催されたJX日鉱日石エネルギーとエネルギー研究所の共催による国際シンポジウムでは、今年の原油価格の見通しは85~100ドルという数字が出ている。足元の原油価格の動向が反映したものとみられるが、昨年のWTI平均は79.61ドルであり、これに比べるとすでに高値で推移していることになる。
先進国の需要はマイナスが続くが、中国、インドは増加するため、世界全体では増加する。供給面では、サウジなどは生産余力があり不足することはないが、中東などの地政学的リスクと、アメリカの金融緩和策から投機資金が商品市場に流入して上昇するとの見方が根強い。
OPEC諸国も原油価格は70~80ドルの価格帯で推移することが好ましいとみており、急騰すると需要減となるため、増産を示唆しているなど、いろいろな思惑が絡んでいる。
一方では、イラクの増産が見込まれている。鉱区を開放しており、世界の開発企業が鉱区を取得して参加が決まっている。イラクの増産が軌道に乗れば需給は緩和され原油価格の下落するとのシナリオもある。もっとも、治安が不安定であるのと、インフラの整備も遅れており、短期間での増産は簡単ではないようである。