日刊ニュース

2011.02.22 のニュース

原油高騰で在庫評価益が発生 ―コスト増転嫁遅れると実質赤字も―

 原油価格は高騰しており、この状況で3月末まで推移すると平成22年度決算では在庫評価益が発生する。
 昨年4月の中東物は82ドルであったが、5月で急落して76ドル、7月が73ドルまで下落、9月には75ドルと反発した。上期は値下がり局面となった。下期に入り10月には80ドル、11月が84ドル、12月が89ドル、今年1月が96ドルと連続して値上がり、2月の足元は98~99ドルヘと高騰している。100ドルに迫り、再び原油高価格時代が到来するとの見方もでてきた。下期はスタートから値上がり局面となっている。
 上期は原油価格が値下がりで在庫評価損が発生したが、下期では、特に1~3月で在庫評価益が発生しそうである。石油各社の4~12月の決算では、小幅な在庫評価損が発生したが需要に見合った生産で対応、需給がタイトで推移したため、石油製品のマージンが増加し、増益となっている。
 このまま原油価格が高値で推移すると、在庫評価益が見込まれることになり、3月決算は予測を上回り上方修正となっている。原油価格も見通しが難しいため、当分様子をみる会社もあるが、足元の高値が続けば在庫評価益が発生して増益となる。
 在庫評価益は、在庫を評価したことによる帳簿上の利益であり、実際の営業活動の利益とは関係がない。利益が計上されると課税の対象となり、実質の利益がないのに納税することになる。企業としては借入れして税金を納税することになり、不都合なコスト増となる。
 在庫評価の影響については東燃ゼネラル石油のケースをみても、在庫・評価法を後入れ先出し法から、今年中に総平均に変更することになるが、その結果、今年の在庫評価益が1600億円発生すると見込んでいる。原油価格を昨年12月の平均である89ドル/バーレル、為替は83円/ドルを前提としているもの。原油価格がこの水準を上回れば、さらに在庫評価益が発生する。この1600億円の利益に対しての課税は約600億円と なり、これを分割して納税する。決算上では営業利益は2600億円と大幅な増益となるが、在庫評価益600億円が発生、相殺すると調整後の営業利益は400億円となる。
 うち、石油部門が300億円、石油化学部門が100億円になると見込んでいる。
 この在庫評価法の変更は商法で決まっており、その期限が今年となっていたものである。他の石油企業は、総平均法に変更済みである。
 それにしても、原油価格の変動によって、在庫評価次第で大幅な利益又は損失が発生する。そのため石油各社は、決算の数字と在庫影響を除いた数字との間に大幅な差が生じ、理解を得ることが難しいことになる。現状では原油価格が値上がりしているため、在庫評価益が発生し、決算の数字では大幅な増益となる。
 しかし、原油高によるコスト増のユーザー転嫁は遅れるのが通例である。足元の石油各社の業績は、原油価格の値上がり局面ではコスト増の転嫁が遅れると月次の決算(営業段階)では赤字となるケースも出るため、原油価格の高騰を警戒している。仕切価格は週決めの市場連動制を導入しているが、業転市況の値上がりが遅れ、元売のマージンは減少している。さらに高騰すると在庫評価益を除いて実質赤字となる。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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