日刊ニュース

2011.02.23 のニュース

原油はWTI安のブレント高 ―中東産も高騰だが関心薄い―

WTIが85ドル/バーレルと下落傾向にあり、一方、ブレントが100ドルを超えており、その間に16ドル以上の異常な価格差が発生している。
 天坊石油連盟会長は「アメリカの原油在庫が高水準にあり、WTIが国内の需給を反映した相場で推移している。ブレントとの問に大幅な価格差が生じており、世界の指標原油としてWTIは機能しなくなっている。WTIに代わって、今後はブレント、ALなどが指標原油となるのではないか」と述べている。
 WTIが安いのかブレントが高過ぎるのかは、見方によって違うが、大幅な価格差が生じていることは世界の原油価格にも大きな影響を与える。いずれは収れんするが、当分の間は価格差は続きそうである。
 WTI安の要因はアメリカの原油在庫が高く、WTIを精製するクッシングでの在庫が過去5年間の平均を大幅に上回る高水準で推移していることが指摘されている。あくまでもアメリカ国内の需給が緩和状況にあることから安値となっているもの。
 中東での政治不安を反映して高騰しているブレントとは別の値動きかしているもの。これだけの価格差が生じれば、本来ならば輸出に回して利益を確保することになるが、現状では輸出するためのインフラがなく、在庫増を解消する方策はない。世界の原油の高値市況が反映しないアメリカの国内のローカルなマーケットとなっている。そのため世界の指標として通用しなくなっている。
 一方、ブレント高の要因は、①エジプトの政変を機にバーレーン、リビア、イランなどのアラブ・中東諸国に改革の波が拡大して混乱が予想される、②ロシア原油のヨーロッパ向けが減少している、③一部は太平洋側へ振替えされており日本にも原油が輸出されている、④北海油田が修理で減産となっている、などの要因が重なっていることがあげられている。さらに、今冬はヨーロッパで早めに寒波が到来したためブレンドは高値で推移していた。
 このようなブレント高の影響を受れて中東産も値上がり、99ドルと100ドルに接近している。日本の輸入原油の大半は中東産原油であるため100ドル相場となればコスト増が問題となるが、WTIが85ドル前後で推移しているため、社会的には関心が薄い。08年の1月にはWTIが100ドルを超えたことで大ニュースになったが、現在85ドルであるためか、ブレントが100ドルを超えて103ドルとなっても大きな問題になっていない。
 しかし、中東産は100ドルという高値であり、国内市況も100ドル相場に見合った新しい市況形成が求められている。WTIが安値であるため、原油価格の値上がりに伴うコスト増の転嫁が遅れているが、ユーザーヘの転嫁に再取組みする時期にある。とくに、ガソリンの市況対策が急務となってきた。
 19日にパリで開催されたG20では、原油、穀物価格の値上がりを監視すべきとの合意がなされている。だが、日本国内では、原油価格の高騰が政治、社会問題とはならず関心は薄い。過去にWTIで145ドルという高値を軽験したことがあり、国民も慣れていることもあるが、政治が与党の民主党内部の造反もあり混迷しており、原油価格の高騰どころではないのが現状である。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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