2011.03.22 のニュース
石油火力にシフトでC重油増産へ ―白油化への対応で供給に苦慮―
東電の福島第一、第二原発の操業停止、第一原発での爆発事故の発生は、これを制御することができず深刻な事態が続いてる。原発の安全神話が崩れているが、今後は石油火力へのシフトが始まっている。
原発の大事故は、3年前の中越地震による柏崎刈羽原発に次ぐものであり、ようやく復旧した直後の事故である。そのため国民感情からみて反発も強く、原発の安全性が問われることになる。震度は想定外のマグニチュード9.0という、日本では経験したことのない大地震であり、安全基準が該当しないこともあるが、原子力政策の見直しが問われることになる。政府の温暖化対策基本法でもCO2削減、エネルギーの供給確保のためには2020年までに9基の原発を建設することが柱となっている。
原発問題は今後の議論となるが、当面は電力を確保するため、石油火力などLNG、石炭にシフトする。石油については供給要請が出ており、石油業界もC重油、生だき用の原油を供給することになる。石油火力を立ち上げることになるが、前回の柏崎刈羽原発の事故の経験があるものの、C重油の供給には苦慮した。最近では、昨年の猛暑で石油火力の稼動率がアップしたことからC重油の消費が増加し、石油業界は供給増で対応した。
石油業界からみると、原発の増加で石油火力が減少して電源構成比では10%を割る低水準となっているため、各社はC重油の販売から撤退している。電力用C重油の販売数量が激減、生産面からも白油化への対応に迫られ今日に及んでいる。その結果、C重油を生産しない製油所を目指し、重質油分解装置を建設することで対応している。そのため急にC重油を増産することは困難な生産体制となっている。石油業界では、電力業界に対して「常に一定数量のC重油を引き取ることを確約すべきである。そうしないと緊急時には供給が困難となる」と要請していた。
また、経産省は、エネルギー高度化法では重質油分解装置の増強を要請しており、これが難しい場合はトッパーを廃棄する政策を打ち出している。このような状況下での大地震で、6製油所が操業停止となっているため、安定供給に対して、新しい問題を提起したことになる。製品不足には増産体制で臨むことになるが、現在の過剰設備が幸いしたという皮肉な結果となっている。設備処理問題も中断となりそうである。
今後、石油各社は電力用C重油の増産に取り組むが、他のガソリンなど石油製品が不足しているため、C重油の増産により他の製品が供給増となる心配は解消されそうである。ただ、供給に際しての重油用のタンカーは廃船しており、発電所に供給できないケースが出てくる。これに対しては電力会社が自社船を操船することで対応しているが、当面は供給不足が続きそうである。
製油所が操業を停止しており、加えてC重油が増産となるため、関東以西の製油所は増産体制で臨むが、東北、関東地区への輸送を円滑に実施することが問題となる。マクロでは供給数量は確保されているが、内航タンカー、ローリー不足で輸送面での混乱が生じている。