2011.03.30 のニュース
原発事故 安全神話崩れる ―エネルギー政策は抜本見直し―
3月11日の東日本大地震の影響で福島原発(909万KW)事故による放射能漏れ、石油業界では6製油所の操業が停止するなど、電力、石油の供給確保策が社会問題となった。とくに原発の事故は、復旧の目途が立たず、社会不安が深刻となり、経済への影響が心配されている。原発の安全神話が完全に崩れることになり、エネルギー政策の抜本的な見直しが求められる状況となってきた。
今回の福島原発の事故は、世界で最大とされたチェルノブイリに次ぐものとみられ、復旧の目途も立たず、計画停電が実施されているが、長期化することは必至である。地元の住民は危険にさらされ、反発を強めており再開は難しい。被災地の復旧・復興には巨額の資金も必要となるが、国としての予算措置、支援策などが具体化するにも時間がかかるため日本経済への影響は計り知れない。
現在は、まず原発が危機的な状況から脱するための作業が行なわれているが、福島原発が再稼動することは難しいとみられる。そのため東電管内の電力不足はカバーできず計画停電は継続されるが、電力需要がピークとなる夏場の供給対策が問題となっている。
とくに原子力政策の推進は困難となり、抜本的な見直しとなる。民主党政府の中長期エネルギー政策では、原子力発電の推進が柱となっており、2020年までに9基を設置することになっている。国会に提案されている温暖化対策基本法は、審議されていないが、CO2削減のためには原発の推進が前提となっている。
原発への反対は共産党のみで、与野党は原発を推進するとしていたが、今回の事故を機に、国内で原発反対運動が強まることは必至であり、世界の原発政策にも影響を与えることになる。わが国も原発の増強を見込まずしてエネルギー政策を推進することは不可能となり、新しい電源を確保する方策を検討することになる。
だが、電源をどこに求めるかとなると、簡単には供給増を確保することは難しい。エネルギー政策の抜本的な見直しが必要となるが、省エネ、節約では、カバーできる数量に限界もあり、当面は停電で乗り切ることになりそうである。電力は蓄電ができず、他の電力会社からの融通も難しい。電源を火力発電などに求めることになるが、立ち上がるまでにはかなりの時間もかかる。
中越沖地震に際して操業を停止している柏崎刈羽原発の再開要請が出ているが、今回の地震で再開はさらに遅れそうである。休止している火力発電の再開を狙って作業を進めているが、福島の第一、第二原発の停止能力分を簡単にはカバーできない。
石油火力発電が操業再開となるとC重油供給確保が問題となる。石油業界としては、電力に供給する体制で臨むが、石油の場合は関連品がでるためC重油のみを増産することはできない。C重油を増産すると、ガソリン、中間留分が増産となり、需給バランスが崩れる。火力発電所に供給するにも、電力C重油が激減したため不要となったタンカーは廃船しているなどの問題点も多い。
また、石油政策も見直しが迫られる。過剰設備問題に取り組んでいるが、現在3ヵ所の製油所が操業を停止しており、供給不足となっているため、これも凍結となりそうである。