日刊ニュース

2011.03.31 のニュース

いま、やれることをやる

津波に襲われた東北の太平洋沿岸は軒並み廃墟になっている。港では陸に船が打ち上げられ、多くの船が湾内に沈んでいる。夏は海水浴客で賑わう海岸や風光明媚な松林も、跡形もなくなぎ倒され、瓦磯の山になっている。地図にあるはずの道路も、その先が海に沈み通行を阻む。この巨大地震と津波で地形そのものが変わった。恐らくは日本地図を塗り替えることになるだろう。
 こうした海岸沿いに住む人たちの一番の足は車である。買い物や病院に行くのも車だ。車がなければなにもできないため、複数台の車を所有する世帯がほとんどだ。海水が引いた後の道路沿いや住宅地には多くの車が横転し、逆さまになり瓦礫に埋まっている。避難所に逃げ、幸いに生き残った人たちの生活を支えるはずの車も多くが失われた。
 津波被害を免れた地区では車も無事だったが、今度はたちまち燃料が足りなくなった。停電が回復した多くのSSが営業を再開したが、在庫を売り尽くすと休業状態に。元売の補給もほとんど途絶えた。お客さんよりもSS経営者のほうが「ガソリンを持ってきてほしい」と悲鳴を上げた。いや、いまでも上げている。
 自治体と災害時協定を結んでいる組合員SSは、まずは人命に関わる消防車や救急車などの緊急車両を優先した。一般のお客さんが何時間も並んでいるところに緊急車両が来て給油し出て行く。店頭では、次第にお客さんとSSスタッフのトラブルが起きるようになった。多くのSSスタッフが身の危険を感じたという。
 次々に想定外のことが起きている。これまで準備していた震災時の対応策は変更を余儀なくされている。福島ではこの地震・津波に加え原発の事故が、避難地区のSSの今後の営業再開に暗い影を落としている。
 ここにきてPBのSSにも油が回り始め、一般向けのみの販売を始めた。その結果、緊急車両を優先してきた組合員SSからお客さんが離れ始めているという。「これが緊急車両を優先した我々への評価なのか…」との声も漏れる。
 それでもまだ多くの組合員SSが供給責任や災害対応など、商売としてではなくライフラインとして頑張っている。被災地の組合幹部が言った。「一喜一憂している暇などない。いまは我々がやれることをやるだけだ」この言葉に救われた。

提供元:全国石油商業組合連合会
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