2011.04.20 のニュース
被災地への供給コスト増加分の転嫁 ―仕切価格の値上げ分で回収ヘ―
東日本大震災後の供給体制は正常化の方向にあるが、石油業界としては、緊急事態で発生したコスト増をどう回収するのか多くの問題をかかえている。緊急事態の終了にはまだ時間もかかるが、正常化に移行すれば、その後は適正マージンを確保することを前提とした市況形成を定着させることがポイントとなる。
元売としての問題点は、①被災した製油所、油槽所、SSのための復旧費用、修理費、新規の設備投資などのコスト増、②製油所の操業停止のために被災地への内航タンカー、ローリーの投入増によるコスト増、③西日本からの製品転送コストの増加、④被災したSS(販売業者)に対する支援策などがかさみ、業績を悪化させることは必至である。
これらのコスト増の回収は、本来ならば石油製品価格(仕切価格)に上乗せするところであるが、緊急時で供給が不足している状況下では値上げは難しい。現に大震災発生後は、各社とも仕切価格を据え置きとしている。仕切価格の据え置きは末端市況の急騰を抑えることを狙ったものであり、便乗値上げをけん制する意味もあった。その結果、ガソリンの末端市況は、150円/L相場の横ばいで推移しており、今回は便乗値上げという批判を受けていない。ガソリンの末端市況は3月で急騰したが、これは原油価格の高騰であり大震災の影響ではないとのことでユーザーの了解を得ている。
被災地への転送によるコスト増か加算することが必要となるが、被災地である東北地区の仕切価格を値上げして高値とすることは不可能であり、公平さを欠くことになる。また、被災によるコストも各社間にバラツキがあり、これを仕切価格に正面切って反映させることは難しい。
震災後は仕切価格を据え置いたが、9日から市場連動制を復活させたことで、この方式を実施しながらコスト増を回収することになる。そのためには適正マージンを確保するための業転市況の形成が求められる。
現在、ガソリン市況は石油情報センター調査で、東北が155円で平均(152円)に比べて3円高となっており、経産局別では一番の高値となっているが、需給が安定すれば価格差は是正される。3月7日の調査では、東北と全国平均は146円の同値であった。その後、被災地の供給不足が深刻化したことで需給タイトが影響したもの。
今後、落ち着けば価格差は是正されるものとみられる。
このような状況下で、コスト増を回収して適正マージンを確保するには、業転市況を堅調に維持することが必要になる。
ただ、心配されるのは、ガソリンが供給増になるとの見通しである。停止している3製油所を除き、フル生産で対応している一方、販売は震災の影響で個人消費が落ち込み販売は減少している。これから、原発の停止で電力用のC重油が増販となり、原油処理がアップするため、ガソリンの供給増は必至であり、ガソリン市況の下落が心配となる。業転市況・先物市況は原油価格の上昇を受けて値上がりしており、「ガソリン安の中間留分高」の価格体系に移行している。これからゴールデンウィークの需要期に入るが、供給増と販売減の状況下で値上がりするのか注目される。