日刊ニュース

2011.05.11 のニュース

原油価格急落 国内市況にも影響 ―欧米の経済指標悪化、商品相場も下落―

原油価格は急落した。5日にはWTIが99.80ドル/バーレルと100ドルを割り込んだ。前日に比べ9ドルの値下がりとなり、ブレントも114ドル、中東産も115ドルヘ値下がりとなった。さらに6日にはWTIが97.18ドルで2.62ドルの続落となった。中東産も101ドルヘ下落した。5月2日(月曜日)のWTIは113ドルであったものが、6日(金曜日) には97ドルとなり、―週間で16ドルの急落である。
 この原油価格の急落が、今後の国内市況にどのように影響するのか注目される。ガソリンは連休商戦で下落傾向にあり、これから市況を立て直す時期にあるが、原油価格の急落で厳しい状況となりそうである。
 原油価格急落で、東工取先物市況も6日には原油価格が6円/Lの値下がりで54円、ガソリンは5円の値下がりで66円、灯油も7円値下がりで66円と各下落した。今後の業転市況の動向が注目されるが、先物に連動して値下がりは必至である。
 WTIは110ドル台の高値で推移していたが、急落した要因は、①アルカイダの指導者のビンラディン容疑者が殺害され、中東地域の地政学的リスクが緩和されてきた、②原油価格は高騰で推移しており、石油需要が減少するとの見通しが出てきた、③アメリカの原油在庫が増加しており需給が緩和する、④欧米の経済指標が悪化、景気の先行き不安から石油需要が落ち込むとの見通しとなってきた、⑤為替はドルが対ユーロで上昇し、金などの商品相場が軒並み下落、原油も連動して値下がりとなった、などの点があげられる。
 4月のWTIは110ドル台で推移、新しいボックス圏を形成しており、高価格が予想されていたため、今回の原油価格の急落は予想外となっている。原油価格は、今後下落するのか、市況が立ち直るのか否か、ここ数日間の値動きが注目される。
 一方では、原油価格の高値が続くという見通しも、依然として根強い。IMFによれば、2011年の世界経済は、中国、インドなどが伸びて全体でも4%増と見通しており、世界の石油需要は以年では150万バーレル/日の増加が予想されている。
 供給面ではリビアの政情不安で原油は減産が続き輸出が減少している。輸出先が欧州であるため北海のブレントが先行して値上がり、これに中東産が連動して値上がりしている。そのため原油価格の体系はブレントが高く、ついで中東産、WTIという順位で推移しており、過去のWTIが高値であった時期に比べると逆転している。
 ブレント高はリビアの政情不安を反映している。リビアの原油生産は約160万バーレル/日あり、石油合計の生産は180万バーレル/日となるが、輸出は150万バーレル/日(85%が欧州)となっている。うち85万バーレル/日が生産を停止しているとみられている。この不足分をサウジが増産でカバーしているが、供給余力があるのはサウジのみであり、供給力は不安定である。
 リビアの政情不安が北アフリカ、中東に波及するとの不安材料が残っており、民主化を求めた動きが拡大すると、原油価格がさらに高騰するとのシナリオも残っている。
 原油価格は急落したが、東日本大震災での石油需要の減少も原油価格に影響する。だが、原発事故で電力用C重油、LS原油の需要増もあり、原油価格の見通しは難しい。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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