2011.05.19 のニュース
原油高 石油開発企業も好決算 ―新規開発プロジェクトに期待―
2010年度の石油開発業界、元売の石油開発事業部門は、原油価格の上昇で好決算となった。原油価格の10年度平均は87.24ドル/バーレル(前年は70.39ドル)で約17ドルの値上がり、ドバイは82ドル(67ドル)で15ドルの値上がりとなった。為替は86円/ドル(93円)で7円の円高となったが、天然ガスも値上がりしたため売上高も増加した。好決算を背景に新規プロジェクトの成功に期待がかかっている。
国際石油開発帝石の経常利益は5085億円で前年比665億円の増、純利益は1286億円で前年比で214億円の増益となった。海外での事業展開であるため経常利益は5000億円と高水準であるが、産油国への支払が法人税で約4000億円の多額となり、差引きすると利益は約1000億円となる。
純利益1000億円台が連続して確保されている。今年のトピックスは、国内では直江津のLNGタンクの建設(2基)、大型のイクシスプロジェクトの推進となる。
石油資源開発は、営業利益は138億円で7億円の増となったが、サハリン石油ガス開発からの配当の減少、有価証券の評価損があり、経常利益は171億円で61億円の減となった。資産除去債務が23億円、東日本大震災で16億円の特別損失を計上したため、利益は100億円で79億円の減となった。今年度の投資はLNG内航船の受入設備(北海道)の建設、イラク・ガラフ油田で5抗を掘削、来年4月から生産を開始する。
アラビア石油は、経常損失が46億円となっている。クウェートとの長期契約で原油4万バーレル/日を販売しているがマージンはない。子会社ではノルウェー北海のギダ油田(5%権益)で生産しているが、販売数量は少量である。再開発案件のメイ油田(10%権益)は、開発の最終段階にあるが、生産は今年度以降の見込み。エジプトースエズ湾のノースウェスト・オクトーバー鉱区(50%権益)は、オペレーターとして取組んでいるが、政情不安で準備中であるなど投資段階でありチャンス待ちである。
元売の石油開発事業部門は、JXの経常利益は595億円(前年は490億円)、コスモが347億円(259億円)、出光の営業利益が215億円(136億円)となっており、各社とも増益となっている。
JXは、操業中のベトナム、マレーシアなどで原油換算で14万バーレル/日を生産しており、長期目標は20万バーレル/日確保を掲げている。探鉱事業では、ベトナム海上の試掘井2坑で成功、米国・メキシコ湾、英国・北海でもガスを確認している。開発事業ではパプアニューギニアのLNGプラント建設(出荷は平成26年)に取り組んでいる。
コスモは、アブダビ石油、合同石油、カタール石油で順調に生産しており、今年度中にはカタールのA構造南部油田で増産を開始する。アブダビ石油の権益30年の延長が決まっており、同時に新規の油田の鉱区を確保している。
出光は北海のノルウェー領、英国領と、ベトナムの3エリアで事業展開している。英国領のバーリー油田、ノルウェー領のベガ・サウス油田は昨年末から生産を開始した。両国の鉱区入札に参加、新鉱区を取得している。ベトナム南部沖のタイガ構造では、油・ガスを確認している。