2011.05.24 のニュース
原油価格 急落後は安定して推移 ―今年度100ドルの見通しも流動的―
原油価格(WTI)は98~100ドル/バーレルの範囲で安定して推移している。
4月から5月初めには110ドル台で推移していたが、一気に97~98ドルに急落した。その要因はアメリカの経済指標の悪化、石油在庫の増加、アルカイダの指導者ビンラディン氏が殺害されたことで中東情勢が緩和したとの見方から下落した。
それでも足元のブレントは112ドル、中東産は106ドルで推移しており、WTIに比べればブレントとは約12ドル高、中東産は6ドル高となっている。
WTIの2010年平均は80ドルとなったが、11年1月平均は89ドル、2月は同値、3月は103ドル、4月には110ドル台(ブレントは123ドル)へと値上がりした。
原油価格の4月における高騰は、エジプト、リビアの政情不安が引き金となった。特にリビアは原油生産が約160万バーレル/日と多く、そのうち輸出が150万バーレル/日、その輸出先として85%を占めるのが欧州であり、内訳はイタリアが28%、フランスが15%などとなっている。そのため、欧州の原油価格の指標となる北海ブレントが急騰した。原油の価格体系は、以前の「WTI高のブレント安」から「ブレント高のWTI安」へと逆転しており、その価格差は約15ドルと拡大している。また、ブレントに連動してWTIが値上がりするパターンが続いている。
原油価格は4月に急騰し、さらに値上がりが予想されたため、一時は国内でのガソリン価格が160円/L超えとなるこども現実味を持った。政府としても、160円が3カ月続くと、以前の暫定税率分25円を引き下げる(減税)ことになっていたため、急遽、財源不足を理由に停止することを決めた。ガソリンは160円/Lを超えないとみて税制改正大綱に織り込んだもので、まったくの予想外れとなった。この措置に対しては、民主党のマニフェスト違反であるとの批判が出たが、大震災のため増税による補正予算を検討
している時期であったためガソリンの減税は不可能となった。
ここに来て、原油急落でガソリン価格は値下がりしているため、160円超えは遠のいたが、一時は160円も予想される状況となり、あらためて原油価格の見通しが難しいこ
とを実証した。08年8月には180円台を経験したが、その後の急落で100円まで下落しており、短期間に再度急騰することは想定外といえる。相場は相場に聞けと言われているように、為替と原油価格の見通しがいかに難しいかを実証している。
同様に石油各社の2011年度の業績見通しは中東産で100ドル/バーレルを想定している。見通しを作成していた4月段階では110ドル台であり、これより低い100ドルを設定したが、今のところ100ドル台で推移している。この水準で推移すれば、在庫評価益、石油開発事業では増益が見込まれる。
ここに来てWTIが100ドルを割ったことで値下がりが加速するとの見方もあったが、100ドル台に戻すなど流動的な値動きをしている。原油価格の急落で国内の先物・業転市況は下落、仕切価格も値下がりとなってきた。中東産が100ドルを割ることになると業績は下方修正へ見直しとなる。新年度がスタートして2ヵ月となるが、東日本大震災の影響で不況となり、石油需要が減少するなどのマイナス材料も多く見通し難となっている。