2011.05.26 のニュース
地場SSも再評価を
大震災ではSS店頭にお客さんの長い長い車列ができ、荷卸しするSSを探し出そうとタンクローリーを追う車も出た。ある調査会社が3月下旬にまとめたインターネットによるアンケート調査によると、「身の回りに不足している商品で現在の生活上困っているもの」の第1番目が「乗用車のガソリン」で2番目が「食料品」、3番目が「灯油」だったという。その調査会社は「生活において緊急性が高いのはガソリン・灯油などの燃料と見ることができる」と総括している。
普段いつでもどこでも買うことができると思っていた石油が、今回のような不測の事態に直面して、あらためて生活に欠かせない重要な商品であると評価されたともいえる。
今回の巨大地震と大津波で製油所や油槽所が被災しタンクローリーが流された。損壊し浸水したSS、そして全壊したSSも。前述のアンケート調査の結果は、こうした石油製
品のサプライチェーンがズタズタに寸断されたためでもある。
しかし、停電が続くこの混乱の中で、地域に根ざして営業を続けてきたSSが人力で立ち上がり、手回しで緊急車両などに給油し、タンクローリーを持つ事業者は県や市町の要請に応えて病院などの救急施設に油を届けた。
自らが被災者でありながら「日ごろお世話になってきた地元のお客さんのために」とSSを開け、必死で油を調達し、給油をした人たちが数多くいた。それぞれマスコミなどで
も紹介されており、業界人としても誇らしく思う。
「面」で供給が遮断される電力やガスなどに比べて、SSは「点」で立ち上がることが可能だ。いち早く立ち上がり、十分とは言わないまでも必要なところに石油を供給した。これは、SSが地域に根ざした分散型のエネルギー供給インフラであったからにほかならない。石油が生活に欠かせない重要な物資であるだけでなく、それを供給するSSと人が地域に住み、そして生業としてきた地場業者であったからこそ、こうした供給が可能だったともいえる。
「効率と集約」がなによりも優先された結果、SS経営は廉販と大型量販が幅を利かせている。しかし、こうした緊急時に本当に石油の供給を支えたのは地域に根ざしたSSだった。今後のエネルギー政策の見直しに際して、決して欠かしてはいけない視点だ。